2012 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア・オセアニア海域における人類の海洋適応と海洋資源利用の環境文明史
Publicly Offered Research
Project Area | Pan Pacific Environmental Changes and Civilizations |
Project/Area Number |
24101702
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小野 林太郎 東海大学, 海洋学部, 講師 (40462204)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際共同発掘調査 / インドネシア / 北マルク諸島 / 遺物分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果としては、これまでにインドネシアのマルク諸島北部およびスラウェシ島北部を中心とした遺跡発掘調査で出土・収集した遺物の分析の実施と、2013年の2月~3月におけるハルマヘラ島北部のトベロ地区での先史遺跡を対象とした発掘調査の実施による新たな考古資料の収集がある。 これら新たに収集した遺物のさらなる分析は2013年度への継続となるが、今年度に開始した分析としては、遺物サンプルの炭素年代測定、出土土器を対象とした胎土分析、出土石器の岩石鑑定分析のほか、各遺物の数量、重量等に関する整理や写真撮影、実測図の作成も実施することができた。このうち年代測定や胎土分析はまだ全てが終了していない状況だが、2013年度中には確実に結果がそろうため、遺跡の時代背景や遺物の詳細に関するさらなる考古データを踏まえ、本研究のテーマである東南アジアからオセアニアの海域世界における人類の移住史や海洋適応、あるいは島嶼適応へアプローチできる可能性が極めて高く、当初に予定していた本年度の成果は十分に達成できたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず達成点の一つとして、インドネシア国内において遺跡発掘調査を実施できたことがあげられる。このうちインドネシアにおける発掘調査の許可を得る手続きはかなり複雑で、また長期に及ぶものであるが、滞在期間中にこれらの手続きを踏まえたうえで発掘調査まで実施できたことは、研究を遂行する上での重要なプロセス、成果であったと考えられる。 さらに2013年2月~3月に実施した発掘遺跡では、これまでの先行研究とは異なる時代・性格の遺跡より多種におよぶ考古資料を収集でき、中でも多様な形態をもつ土器や、フィリピン諸島方面でも出土が確認されている土器文様が出土したことから、新石器時代後期における海上交易や周辺世界との人の移動や流通にもアプローチできる可能性が出てきたことは大きな成果の一つであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は大きく二つの方向で進める。一つは2012年度の発掘調査で出土した遺物となる大量の人骨のほか、動物骨、魚骨、貝類のさらなる分析を実施し、マルク諸島における人類の移住や資源利用、海上交易の歴史を明らかにしていく分析研究の継続である。 二つ目に、最終年度となる2013年度は発掘調査を実施しないかわり、今後の研究において改めて発掘対象とできる良好で歴史的価値の高い遺跡の確認調査を実施し、その上で今後もインドネシアでの共同発掘調査を実施できるように、ジャカルタの国立考古学研究所や各地方の考古局、地方自治体関係者らとの良好な関係性を維持するための打ち合わせや、これまでの調査成果に関する報告会の開催や報告書の提出が重要となる。同じくインドネシア国内だけでなく、日本国内や海外においてもその成果を学術誌や国内外の学会等にて積極的に公表していく計画である。
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Research Products
(10 results)