2012 Fiscal Year Annual Research Report
アルケン・アルキンスキャニングによる迅速構造活性相関ストラテジー
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Biology using bioactive natural products as specific ligands: identification of molecular targets and regulation of bioactivity |
Project/Area Number |
24102502
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
市川 聡 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (60333621)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 天然物 / 抗菌剤 / 有機合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ウリジルペプチド系天然物の全合成経路の確立を目指した。ウリジンのZ-ヨウ化アルケン誘導体とテトラペプチドカルボキサミド体との銅を触媒としたクロスカップリングによるオキシエナミド形成反応を鍵反応とする、パシダマイシンDの初の全合成を達成しており(Org. Lett. 2011)、本経路を用いて3'-ヒドロキシパシダマイシンDの合成も行った。標的酵素であるMraYの阻害活性と抗緑膿菌活性を評価したところ、3'-ヒドロキシパシダマイシンDは天然物と同等の活性を有する事がわかり、3'位への水酸基の導入は許容であることがわかった。3'-ヒドロキシ体は天然物よりも合成が簡便である。各種アルケン・アルキン置換誘導体を効率的に合成すべく、本全合成経路の改良を行った。多成分反応は、一工程で複雑な骨格を構築できるのみならず、用いる成分を交換することで容易に多様な誘導体合成を可能にする。3'-ヒドロキシパシダマイシンDの合成にUgi 4成分反応を適用することとし、誘導体を合成終盤で一挙に構築することとした。まず、Z-ビニルヨードウリジン誘導体とホルムアミドのクロスカップリングによりN-ホルミルエナミド体を調製した後、脱水反応によりイソニトリル体を得た。その後、Ugi 4成分反応によりウレアジペプチド、アルデヒド、置換ベンジルアミンと連結し、残る一つのアミノ酸をN-末端に導入し、脱保護する事で3'-ヒドロキシパシダマイシンDの合成を達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画では、研究初年度はウリジルペプチド系天然物の誘導体合成に適した全合成経路の確立を目指していた。実際に当該年度では、銅を触媒としたクロスカップリングによるオキシエナミド形成反応を鍵反応として、パシダマイシンDと、合成がより容易な3'-ヒドロキシパシダマイシンDの合成を達成する事ができた。また3'位への水酸基の導入は許容であることを明らかにし、誘導体合成の効率化の目処がたった。さらに各種置換誘導体を効率的に合成すべく、Ugi 4成分反応を利用して誘導体を合成終盤で一挙に構築することも計画していた。これについても、ウレアジペプチド、アルデヒド、置換ベンジルアミンを用いた結果、所望のUgi成績体を得る事が出来、残る一つのアミノ酸をN-末端に導入し、脱保護する事で3'-ヒドロキシパシダマイシンDの合成を達成することができた。これにより効率的な誘導体合成法を確立する事ができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、各種アリル・プロパルギル基置換フラグメントの調製と、これらのフラグメントを用いて各種スキャニング用誘導体を合成する。第2段階目である、スキャニング誘導体に対する置換基導入に関して、どのような反応が適用できるかを予備的に検討することとし、クロスカップリング・メタセシス・クリックケミストリー等をベースとして反応を検討する。合成した緑膿菌に対する抗菌活性を指標として、取り込みに与える各置換基の影響についてスキャニングを行う。スキャニング用誘導体のうち、活性を保持した化合物は、様々な置換基を導入することで構造活性相関研究を行い、高活性誘導体を見いだす。具体的な研究推進方法は、以下のとおりである。抗菌活性発現のもととなる標的酵素MraYは、細菌細胞膜貫通型のタンパク質であり、その活性部位は細胞質側に存在する。そのため、本酵素を標的とする分子は、細胞膜を透過するだけの脂溶性が必要である。ムレイドマイシンは、その化学構造から十分に脂溶性に富んでいるとは言えない。そこで、脂溶性残基を中心とした各種官能基の導入を行う。この際、申請者らが手掛けてきた天然物の膜透過性の向上を指向した創薬化学のノウハウを利用して効率的に、構造活性相関を検討する。 ムレイドマイシンの緑膿菌体への取り込み様式や細胞内局在を直接観察する事は、取りさらに、取り込みの標的分子を同定するためのケミカルプローブの合成を行い、取り込み標的分子の同定を行う。例えば、ビオチンを結合した光反応性クロスリンカーを活性保持型スキャニング誘導体に導入し、緑膿菌細胞破砕物と混合・クロスリンク反応を行う。アビジンビーズによるクロスリンク成績体のつりあげの後、結合タンパク質のフラグメント化、質量分析結果の解析によるタンパク質の同定を行う。
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