2012 Fiscal Year Annual Research Report
天然物リガンドによるイオンチャネルの活性化と植物Kチャネルの選択的阻害剤の探索
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Biology using bioactive natural products as specific ligands: identification of molecular targets and regulation of bioactivity |
Project/Area Number |
24102504
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浜本 晋 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10533812)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イオンチャネル / ジャスモン酸配糖体 / パッチクランプ |
Research Abstract |
マメ科植物のアメリカネムノキは、夜は葉を閉じ、朝になると葉を開く就眠運動を行うことにより、寒冷耐性と乾燥耐性を獲得している。これまでにジャスモン酸配糖体((-)-LCF)による就眠運動の誘導が報告されているが、就眠運動の分子機構の全容は未だ解明されていない。これまでに、((-)-LCF)が葉の付け根の葉枕に含まれる運動細胞の収縮を誘導することによって就眠運動が起きることを報告した(Plant Physiol 2011)。細胞収縮にはイオンチャネルの活性化による浸透圧の調節機構の関与が推察される。本研究では、申請者らが独自に改良した高感度パッチクランプ装置を用いて天然物リガンドとその制御下にあるイオンチャネルの同定を行い、就眠運動の分子メカニズムの全容を解明することを目的としている。アメリカネムノキの葉枕の運動細胞のプロトプラストを作成してパッチクランプ実験を行ったところK+が細胞から流出する電流を検出した。本プロトプラストをLCFを用いて処理したところK+流出電流に変化は見られなかったため、LCFは直接K+チャネルを活性化するのではなく、細胞内からのK+チャネルの制御もしくは何らかの受容体を介してK+チャネルを制御していることが推察された。次に、細胞質内に該当するパッチクランプピペットにLCFを添加してK+電流とCa2+電流を観察したところ、いずれの電流にも変化は見出されなかった。植物の代表的な運動細胞である気孔を形成する孔辺細胞では、細胞の収縮にはイオンチャネルのリン酸化が必要であることが近年明らかになっている。葉枕の運動細胞においても同様の制御機構が存在することが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでにパッチクランプ実験により、葉枕の運動細胞においてK+排出電流とCl-排出電流の両方を検出することに成功しており、運動細胞の細胞膜に陽イオンチャネルと陰イオンチャネルが存在することを明らかにした。しかし、就眠運動の上流制御因子であるジャスモン酸配糖体((-)-LCF)とイオンチャネルの活性化メカニズムを結び付ける有力な知見はいまだ得られていない。 研究が遅れている要因として、パッチクランプ実験に適した状態の良いプロトプラストの調製が困難であったことが一因と考えている。アメリカネムノキのプロトプラストの状態は季節に強く依存しており、亜熱帯を原産とするアメリカネムノキは日本の冬の低温に非常に弱いと考えられる。実験に用いるアメリカネムノキは、人工気象室の中で育てているが、実験操作に伴う温度変化などの寒さの影響を受けているようである。今後、季節の移り変わりにともない、気温が上昇するためプロトプラストの状態の向上が期待される。また、プロトプラストの作成に用いるセルラーゼ酵素液の組成の見直しが必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
寒さの影響によりパッチクランプに適したプロトプラストの調製効率は下がっていたが、これから気温の上昇とともにプロトプラストの状態が上向くことが期待される。さらに、プロトプラストの調製方法を変更することにより、以前よりも状態の良いプロトプラストの調製効率があがっており、パッチクランプ実験の実施回数を増やせると見込んでいる。これまでの調製方法よりも細胞壁除去酵素であるセルラーゼの濃度を下げつつ、酵素処理時間を長くすることでプロトプラストの状態が良くなりつつある。 さらに、パッチクランプの成功率を向上させるためにパッチクランプ実験に使用するガラスピペットの材質をホウ化ケイ素に変更する。このことにより、ガラスピペットと細胞膜との親和性が向上し、ピペットと細胞膜の密着度が増すと考えられる。さらにノイズの低減も期待されるため、より高精度なデータの取得が可能となる。材質の変更にともない、パッチピペットの作成装置の設定を再検討する必要が生じたが、平成24年度内に設定を見直しているため、直ぐに新しいピペットを使用した実験が可能となっている。 パッチクランプ装置の改良により、パッチクランプ実験の成功率とS/N比の向上をめざしており、本年度五月末までに改良を終了する予定である。本改良により、ノイズはこれまでの1/5に減少するため、検出が困難であった輸送速度の遅い輸送体の活性の検出が可能となる。
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Research Products
(7 results)