2012 Fiscal Year Annual Research Report
核内受容体リガンド依存性タンパク分解機能による新規リガンド評価系の構築
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Biology using bioactive natural products as specific ligands: identification of molecular targets and regulation of bioactivity |
Project/Area Number |
24102511
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
岡田 麻衣子 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00572330)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生理活性物質 / 標的特異的タンパク分解 / ユビキチン / 核内受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
リガンド依存的なタンパク分解機能のin vitro評価系を構築にあたり、エストロゲン及びエストロゲン受容体に焦点を当てた機能解析を行った。 具体的には(1)エストロゲン依存的なタンパク分解を担う酵素活性中心因子群の機能解析、(2)リガンド依存性タンパク分解経路を有する細胞種の検討(3)タンパク分解能に対するエストロゲン受容体共役因子群の探索を行った。 (1)については内因性エストロゲン受容体をbaitとしたアフィニティー精製により、HECT型ユビキチンE3リガーゼを同定した。ユビキチンE3リガーゼはユビキチンタンパクを一つあるいは鎖状に基質に付加する修飾酵素である。in vitro ubiquitination assay系を構築することで、エストロゲン受容体がリガンド依存的にユビキチンリガーゼ活性を制御することを明確にした。さらに、(2)エストロゲン依存性タンパク分解経路が正常子宮内膜上皮細胞や乳がん細胞株において細胞増殖に寄与することが示唆された。また、相互作用を指標としてこのユビキチンリガーゼをパートナー因子とする核内受容体群のスクリーニングを進めている。(1)(2)の結果を踏まえて、(3)リガンド依存的なタンパク分解機能の共役因子群の探索を行った。エストロゲン受容体及びユビキチンE3リガーゼを主軸にアフィニティー精製及びプロテオミクス解析を行い、網羅的な候補因子群の同定を行った。同定因子群に関してはin vivo/in vitroにおいて解析を進めており、エストロゲン受容体のタンパク分解能を制御する候補因子として新規脱リン酸化酵素を見出している。 以上、本年度はエストロゲン依存性のタンパク分解機能の明確化や他のリガンド/核内受容体への応用性を検討することで、リガンド依存性in vitro評価系の基盤の一旦を構築したと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目標はタンパク分解機能に選択的なER共役活性化因子群の同定であり、プロテオミクス解析を主軸とした候補因子群の網羅的な探索を行った。その結果、数種の共役活性化候補因子群が同定に成功している。さらに、同定因子群の機能解析を通じて細胞周期シグナルに関与するエストロゲン受容体のリン酸化/脱リン酸化状態がタンパク分解機能のスイッチとして機能する可能性が示唆されている。このような修飾スイッチ機構はin vitro assay系に反映可能であると考えられ、今後、本研究課題の最終目的であるリガンド依存性in vitro ubiquitination assay系の感度向上の基盤を担うものであると言える。以上、本研究課題は当初の研究目的に向かっておおむね順調に進展していると言える。 また、本年度は地区ミニシンポジウムの企画を行っている。このシンポジウムは多様な視点から生理活性ステロイドについて紐解くことを目的としており、農学・医学・理学などの多岐に渡る研究背景を有する研究者同士の議論を介して、新たな研究推進方法開発の一助となることが期待される。実際にこのシンポジウムを機に共同研究が進展しており、次年度以降の研究遂行への反映を予定している。 以上、本年度は自身の研究を遂行すると共に当該研究分野の活性化や研究成果の還元についても積極的に寄与しており、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は平成24年度において同定した因子群が、リガンド依存性標的特異的遺伝子発現制御と標的特異的タンパク分解制御のいずれの制御機構に寄与するかを判別する。このうち、タンパク分解機能に特化した共役因子群に焦点をあててin vitro ubiquitination assayの再構築系に供する。分解基質のポリユビキチン化を指標に分解基質と共役活性化因子群の組み合わせを最適化する。同時に、共役活性化因子群のノックダウン細胞を用いて分解基質のタンパク量の変動を検討し、in vivoにおいても組み合わせが最適であることを確認する。 確立したin vitro ubiquitination assayを行い、種々のエストロゲン(17b-estradiol, Estriolなど)、食品成分由来のエストロゲン様物質などがエストロゲン受容体を介した標的特異的タンパク分解能に与える影響を検討する。また、組織特異的なER合成リガンドでありER関連疾患の治療薬でもあるSERM: Selective ER modulator (Tamoxifen, Raloxifen,など)についても同様に検討する。これにより核内受容体の転写機能とタンパク分解機能の各機能に特化したリガンド探索への応用を試みる。核内受容体は各種疾患との密接な関連が知られているため、本評価系による新たな核内受容体リガンドの同定により、将来的には創薬や機能性食品開発への発展による社会的貢献が大いに期待される。 これらの研究成果は、原著論文として国際科学誌への掲載や国内外の学会や公開シンポジウムへの参加を積極的に行うことで研究成果の還元を試みる予定である。
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Research Products
(3 results)