2012 Fiscal Year Annual Research Report
多環式天然抗腫瘍性物質の全合成とケミカルバイオロジー
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Biology using bioactive natural products as specific ligands: identification of molecular targets and regulation of bioactivity |
Project/Area Number |
24102531
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
細川 誠二郎 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (10307712)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ケミカルバイオロジー / 多環式化合物 / 抗腫瘍性物質 / 天然物 / 全合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベンゾピレノマイシンを合成してHeLa細胞に対する活性を調べたところ、文献の濃度では培地に溶けないことが判明し、生成した針状結晶の貪食によって増殖抑制が示されることが分かった。申請者は、ベンゾピレノマイシンにカルボキシル基を導入することによって水溶性かつHeLa細胞に増殖抑制を示す化合物を早世した。ここでベンゾピレノマイシンが持つエステルを加水分解してできるカルボン酸は、水溶性ではあるが、活性を示さなかった。これによってエステル部が必須の官能基であることが分かった。ヒバリマイシノンの誘導体合成においては、光官能基の導入に適した中間体の量産が必要となるため、まず、各反応の最適化と再現性の確認を行った。特に八員環骨格構築の鍵反応に用いるチオラクトン二量体は、光学分割した後に、望まない立体化学の軸異性体を使うことができなかったが、今回、軸異性体のヒドロキノン部をキノンに酸化することにより、70℃にて軸異性化を行い、再利用することが可能となった。 エストラジオールの化学生物学研究においては、今年度ステロイド化合物のエナンチオディファレンシャル法へのツールとして合成計画していたエナンチオマーエストラジオールの合成が完了し、15th International Congress on Hormonal Steroids and Hormones Cancerにて発表を行った。蛍光標識のためのリンカー付きのエナンチオマーエストラジオールの合成が進行中である。また、2-メトキシエストラジオールの合成も完了した。活性型ビタミンD3類縁体合成は現在進行中であり、H25年度には種々の合成および合成ルートの短縮が期待できる。 また、エストラジオールのPET(陽電子放射断層撮影)イメージングツールとして、18F標識エストラジオールの合成とその生物活性測定を行い、特許出願を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベンゾピレノマイシンにおいては、合成品を用いた活性測定によって文献記載内容に疑いがもたれることが分かったが、その上で水溶性誘導体を合成し、それにHeLa細胞増殖抑制を実現した。また、活性に必須の部位も特定できた。さらに、エナンチオディファレンシャル法に必要なベンゾピレノマイシンのエナンチオマーも合成しているので、現時点での達成度は高い。 ヒバリマイシノン誘導体の合成には多段階を要するため、時間がかかることが予想されるが、各工程の最適化と再現性の確認がなされており、現在スケールアップ合成を行っていることから、予定通りの進度といえる。 エストラジオールを用いた研究では、ほぼ計画通りにエナンチオマーエストラジオールの合成が完成し、その生物活性を測定することができた。2-メトキシエストラジオールおよび活性型ビタミンD3類縁体の合成も完成したが、生物活性測定は今後の課題である。18F標識エストラジオールは合成とその生物活性測定を完了したが、その結果より構造活性相関を検討し、側鎖の長さなどの検討を行なっている。 計画通りに進行している化合物、計画よりもやや遅れ気味で進行している化合物、計画よりもかなり進んでいる化合物と全体的には順調に達成していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ベンゾピレノマイシンはそれ自体が蛍光を持つので、まず、蛍光顕微鏡で細胞のどこの部分に作用するかを調べる。また、さらなる構造活性相関研究を行い、より活性の強い化合物を探索するとともに、これまでの合成中間体を用いて活性最小構造の決定を行う。構造活性相関研究での知見を用いて、エナンチオディファレンシャル法にて標的タンパクを同定する。 ヒバリマイシノンについては、スケールアップ合成を行い、分子の対角に光反応基を付けてダブルフォトアフィニティーラベリングを行う。 エストラジオールの化学生物学研究では、平成25年度には蛍光標識エナンチオマーエストラジオールが完成し、ステロイド化合物でのエナンチオディファレンシャル法ができると考えている。計画よりもやや遅れ気味で進行している合成については、別のルートでの合成検討など完成するために工夫する。平成24年度での生物活性の結果を踏まえた構造活性相関研究により化合物から生物活性、そしてまだ特異的な化合物の形を持つように合成検討とChemBioChemの実現に寄与する。
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