2012 Fiscal Year Annual Research Report
病的細胞増殖・細胞死・組織線維化・血管新生を選択的制御する化合物の探索
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Biology using bioactive natural products as specific ligands: identification of molecular targets and regulation of bioactivity |
Project/Area Number |
24102533
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小嶋 聡一 独立行政法人理化学研究所, 分子リガンド生物研究チーム, チームリーダー (10202061)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | ケムバイオケム / 腫瘍学 / 血管新生 / 線維化 / TGF-β / トランスグルタミナーゼ / 非環式レチノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生体にとって必要な生理的な細胞増殖・細胞死・組織線維化・血管新生は阻害せずに、病気の原因となる生体にとって都合の悪い細胞増殖・細胞死・組織線維化・血管新生を選択的に制御する新規薬剤(いわば“勧善懲悪化合物”)を探索し、その有用性を評価して、根底にある分子機構を解明することを目的として、以下の実験を行った。 (1)非環式レチノイド(ACR)処理した肝癌細胞と正常細胞を用いてマイクロアレイ解析を行った。その結果、N-myc遺伝子は正常ヒト肝細胞(Hc)ではまったく転写されておらず、肝癌細胞JHH7でのみ高い転写を受けており、その転写はJHH7細胞をACRで4時間処理すると一過性に強く抑制された。 (2)トランスグルタミナーゼ2 (TG2)核局在を標的とした病的細胞死制御剤を同定するために、ウコン抽出画分をHcに加えTG2の細胞質と核における活性を定量した。その結果、ウコン抽出画分の一つがTG2の核局在、もしくは核での活性を強く阻害することを見出した。 (3)TGF-β活性化反応を標的とした病的組織線維化抑制剤をスクリーニングし、約3万低分子化合物より血漿カリクレイン活性には影響を及ぼさず、組換えLAPの切断化のみ阻害する1化合物を同定した。この化合物とLAP切断部ペプチドとの結合を詳細に調べる為にBiacoreを用いて解析している。 (4)TG2によるRBタンパク質の架橋・リン酸化修飾による転写因子E2F活性化、EZH2発現誘導、VASH1発現抑制が腫瘍血管新生に必須であることをTG2欠損マウス由来肺動脈内皮細胞を用いて実証した。動脈リングex vivo病理学的血管新生プロセス解析モデルではTG2特異阻害剤R281/R283を用い、動脈リングの血管新生が阻害されることを確認した。また、VASH1の発現をsiRNAで抑制すると、血管形成活性がレスキューされることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ACRで処理した肝癌細胞と正常細胞を用いたマイクロアレイ解析により、肝癌細胞で発現が亢進し、ACR処理により発現が抑制されるN-myc遺伝子を同定している。また、食品化合物であるウコン抽出物によりTG2の核での活性化を強く阻害されることを示している。そして、TG2を阻害することにより癌血管新生のみを抑制する分子機構を明らかにしているので、この申請課題は順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に進展しているので予定通り、下記の4つの課題に取り組み勧善懲悪化合物を探索する。(1)非環式レチノイド(ACR)による癌特異的細胞死誘導経路の解明。(2)トランスグルタミナーゼ2(TG2)核局在を標的とした病的細胞死制御剤の化合物スクリーニング。(3)TGF-β活性化反応を標的とした病的組織線維化抑制剤スクリーニング。(4)腫瘍血管新生選択的制御剤の化合物スクリーニングと分子機構解明。
|