2012 Fiscal Year Annual Research Report
サブミリ波を用いた原始惑星系円盤の進化段階の観測的解明
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontiers of Extrasolar Planets: Exploring Terrestrial Planets |
Project/Area Number |
24103504
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
塚越 崇 茨城大学, 理学部, 補助金研究員 (20533566)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電波天文学 / 原始惑星系円盤 / 惑星系形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
原始惑星系円盤の多分子輝線観測については、これまでASTE望遠鏡で取得した、円盤に含まれるガス成分のデータ解析を進め、円盤進化に伴う分子量変化の傾向を調査した。理論計算で示唆されるような、ダスト進化および沈殿に伴うガス量の変化が見えつつあり、結果については研究会での発表も行った。また、様々な円盤の進化指標を得るため、ミリ波連続波データの解析を進めると共に(研究会にて発表済)、既存の赤外線データをサーベイしデータベースの整備を行なった。 多分子輝線観測の結果、特徴的な進化段階を示していた2天体に対し、電波(Submillimeter Arrayを使用)および赤外線(すばる望遠鏡を使用)による高分解能観測を行い、その解析を進めた。そのうち1天体では、非常に大きな穴構造(半径~70AU)を持つ原始惑星系円盤の様子を、両波長データから明らかにする事が出来た。穴構造の中には少量のダスト成分が残存しており、穴内には原始惑星系が存在する可能性がある。この結果は間もなく論文として投稿する見通しであり、先立って様々な研究会での発表や、ホームページによる報告も行なった。また、別の原始惑星系円盤においては、すばる望遠鏡を用いて、非対称性を持つ円盤構造の様子と内側の穴構造内にブリッジ状構造の検出に成功しており、結果を論文にまとめている。 原始惑星系円盤の構造を空間的に分解する為、次世代大型電波干渉計ALMAでの観測検討を行なった。小規模ワークショップ等で、これまで取得してきた独自データを元にしての観測案を提示した。上述の1天体は、ALMAのcycle1プロポーザルへの提案が通過し、高プライオリティによる観測が行われる見通しとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ASTE望遠鏡の故障に伴い、初年度計画していたASTEによる観測は満足に行えなかった。しかしながら、これまで取得してきたデータをベースにして解析を行ってきており、円盤ダスト進化に伴う分子量変化の様子が見えつつある。別途解析を進めているミリ波連続波データおよび赤外線データのデータベース化も行えており、これらを元にさらに議論を深められる期待がある。 一方で、先立って電波干渉計および赤外線を用いた高分解能イメージングを行なう事に成功しており、既知の中では最も大きい穴構造を持つ円盤の、両波長データによる観測に成功している。結果は間もなく投稿見込みであり、原始惑星系円盤の進化の研究において、今後重要なデータとなると思われる。更に、ALMA cycle1で提案した観測が、高い競争率をくぐり抜けて受理されており、このデータは次年度に取得される見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね予定通り、電波干渉計による観測を推進する。24年度の研究推進において、大型干渉計ALMAでの観測提案を行い、観測する見込みとなった為、データ取得に合わせて解析を進めていく。原始惑星系円盤の非対称性構造や穴構造などの物理状態と、円盤進化との関係について議論していく。また、これまで取得してきた独自データを元に、新規観測提案についても議論を継続させていく。 ダスト進化の指標である、電波波長帯におけるSEDの傾きを導出していくが、当初予定していたASTE搭載予定の連続波カメラは搭載が遅れる見込みとなったため、過去にASTEで取得された1.1mm連続波のデータ(AzTEC)や他望遠鏡のデータを駆使して導出を行う。また、ミリ波・サブミリ波よりも小さいダストを反映する赤外線データと組み合わせることでも、ダスト進化についての指標を得ていく。一方、ASTEが再起動される見込みであり、初年度に取得できなかった分子データの取得も目指す。 これらのデータを元に、研究課題に対する包括的な議論を行っていく。ASTEで取得された多分子輝線観測の結果と、ミリ波・サブミリ波および赤外線から得られるダスト進化の指標を元に、円盤ダスト進化に伴う分子輝線強度(分 子アバンダンス)の変化を調査する。また、干渉計による高解像度データを元に詳細な円盤構造についての調査を行う。得られた結果を論文化し、HP等を使用した広報活動も行っていく。
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