2012 Fiscal Year Annual Research Report
GPUとSSDを利用したパソコンによる高解像度円盤シミュレーション
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontiers of Extrasolar Planets: Exploring Terrestrial Planets |
Project/Area Number |
24103506
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村主 崇行 京都大学, 白眉センター, 助教 (50599149)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 天文学 / 惑星形成 / 情報学 / プログラム自動生成 / 最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近い将来に原始惑星系円盤の内縁部が観測可能となることを念頭に、その降着機構としてもっとも有力視されている磁気回転不安定性(MRI)の大局的な飽和状態をシミュレーションで実現し、惑星形成過程との相互作用を解明することである。そのために円盤全体を計算領域に入れ、MRIの最大成長波長を分解できる解像度をもち、原始惑星系円盤で働くと思われる効果を取り込んだ諸円盤モデルの3次元磁気流体(MHD)シミュレーションを行うことである。
このため代表者はまず、かようなプログラムを自動生成・自動最適化するためのプログラミング言語であるParaisoを開発してきた(文献3)。このプログラミング言語は、シミュレートしたい物理現象を偏微分方程式の陽解法として離散化済みのアルゴリズムの記述を与えれば、対応する最適化済みのマルチコアおよびGPUプログラムを生成してくれる。いっぽうで、MRIと相互作用しうるさまざまな物理素過程を順次研究し、とくにMRIの自己維持と放電現象の相互作用について多数の3次元シミュレーションを行って研究した(文献1)。この文献ではMRIの自己維持に関して従来知られていなかった必要条件を提案した。このようなMRIを始めとする原始惑星系円盤における電磁気的プロセスの相互作用から現れうる雷シグナルについてまとめ、博士論文を執筆した(文献2)。ここでは氷ダストの衝突によって生じる雷現象や前述のMRIの自己維持によって生じる雷現象について、その観測可能性まで含めて論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、すでに所有している小規模GPUクラスタや、共同利用可能なGPU計算機を用いて、すでに開発してあるマルチGPU向けMHDコードに、円盤のグローバル計算に必要な非一様座標や境界条件を実装してゆき、また速度チューニングなどを実現し、大解像度計算の準備を行う予定であった。今年度は、MRIと相互作用しうるさまざまな物理素過程の研究は進んだものの、今年度中に、MRIを分解する解像度で差動回転円盤の大局シミュレーションを実現する予定であったが、これは実現しなかった。この原因としては、さまざまな相互作用とカップルした磁気流体方程式の離散化はまだ完全に既知とはいいがたく、結果として本研究代表者の能力とプログラム自動生成によっては数値不安定性を排除したコードを作れなかったことにある。そもそも、原始惑星系円盤の歴史を解き明かしたいという本分野の究極の動機に対して、このような陽解法によるアプローチがはたして期間内に十分な貢献ができるのかは疑問となってきた。
そこで、今後は、ひとつには私の得意な雷現象を軸に、様々な物理過程とMRIの結合を研究する。また陽解法の大規模シミュレーションに拘らず、関数型プログラミングや自動定理証明が可能にする革新的に拡張されたプログラミング空間のなか、現行入手可能な計算機リソースでいかに原始惑星系円盤の長時間発展を解き明かすことができるのか、より広範囲から解決策を探っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
原始惑星系円盤の大局的3次元シミュレーションが、現状の世界的に最先端のものでも1000周期程度にとどまっていること、それに対し原始惑星系円盤の寿命は数百万年と目されている。ということは、原始惑星系円盤の全寿命を解き明かすには今の1000倍規模の時間刻みが必要ということになり、これはいかにこの先計算機の並列化が進んでも当分の間は実現しそうにない。このことから、最近私は、偏微分方程式の求解問題を、最小作用形式 に書き直し、関数解析に基づいた、時空間最適化問題として解く方法に注目している。これには、従来の非メッシュ解法の開発の指導原理として用いられてきたGノルム最適化を時空間に拡張するアプローチ、分子生物学にて同様に時間の壁を乗り越えるために用いられているGeneralized-Ensenble法の応用、また分散計算が必要なほどの大規模データの最適化問題を部分最適化問題の組に帰着するIncremental Gradient Descent法などのアプローチおよびその組み合わせが考えられる。 原始惑星系円盤の降着機構を解き明かすために、GPUの高速演算性能と、SSDの大きな帯域幅をともに活かすため に、GPUのビデオメモリをキャッシュとして活用するという、本研究の基本アイデアは変わってはいない。 もしそのようなシミュレーションが可能であれば、次に、原始惑星系円盤においてMRIと相互作用しうるさまざまな効果をとりいれたサーベイ研究を行う。GPU-SSD計算機の速度と効率を生かして、中規模の解像度や局所計算などで数百のパラメータを網羅する計算を行う。とくに大解像度計算によって得られる知見が大きいと目される項目を見定め、4,5回の大解像度・大局シミュレーションを行う。また研究成果を世界的に発表し、世界の研究者からフィードバックを受けていく。
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Research Products
(11 results)