2012 Fiscal Year Annual Research Report
銀河系スケールでみる原始惑星系円盤の進化:円盤降着過程の観測的解明
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontiers of Extrasolar Planets: Exploring Terrestrial Planets |
Project/Area Number |
24103509
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安井 千香子 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (00583626)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 原始惑星系円盤 / 惑星形成 / 金属量 / 降着円盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
惑星は星の周囲を取り巻く「原始惑星系円盤」の進化(=中心星への“降着”+星間物質への“散逸”)の過程で生まれるため、そのメカニズムの解明は、惑星の形成過程を明らかにする上で極めて重要である。われわれは、天文におけるあらゆる物理・化学プロセスに深く関係する基本パラメータである「金属量」(重元素量)に着目した観測研究をすすめている。今年度は、観測が比較的容易な低金属量サイドについて、われわれがこれまでに独自に距離と年齢を求めた円盤を持つ星をターゲットとして、「Gemini」8.1mの大型望遠鏡を用いた高感度な可視光分光観測を行った。また、銀河系内縁部の高金属量領域については大きな星間減光をともなうため、「すばる」8.2m望遠鏡の赤外線装置IRCSによるKバンドでの赤外線分光観測を行った。得られたデータ中の多数のH2O、CO吸収線よりスペクトル型を同定し、水素Hα、Brγ輝線を指標として降着率を導出し、最終的に個々の星の年齢と円盤降着率を明らかにする。今後、これまでに導出された太陽近傍天体での年齢と円盤降着率の関係との比較により、円盤降着率の金属量依存性、ひいては円盤の進化過程の金属量依存性について議論する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、本年度はまず観測が容易な低金属量サイドについて、「すばる」8.2mのような大型望遠鏡を用いた高感度な可視光分光観測により、低金属量下のみでの円盤の降着率と年齢の関係を明らかにする予定であった。しかし、当初の計画以上に観測が進展し、大きな星間減光をともなうために観測がより困難な銀河系内縁部の高金属量領域についても同様に8m級の大型望遠鏡を用いた赤外線分光観測を行うことができた。低金属量、高金属量サイドともに十分に質の高いデータの取得に成功し、来年度以降は天気などのコンディションに左右されうる最大の不安要素(観測)無しに、結果と議論を進めることに専念することができるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに、銀河系の内縁部から外縁部について「すばる」8.2mのような大型望遠鏡を用い、低金属量下から高金属量下での円盤の降着率と年齢の関係を求めるための高感度な近赤外/可視光分光観測を行った。原始惑星系円盤では、中心星に質量降着が起こる際に、重力エネルギーの解放により強い水素輝線が生じることが知られており、その強度から円盤降着率を直接見積もることができる。太陽近傍では可視Hα輝線の観測より降着率が測定されているが、それが年齢の増加にともない明確に減少することが知られている。降着率が円盤質量に比例することから、この減少は単純に円盤質量の減少を表していると解釈されている。来年度は、得られた全金属量域でのデータについての考察をすすめる。まず、1)降着率の初期値(年齢~0.1Myr)の違いから、降着率の粘性係数(α)の金属量依存性の有無を確認する。0次近似では円盤の初期ガス質量は金属量に依らないと考えられるので、降着率の初期値の違いは降着の粘性係数の違いを直接反映していると考えられ、αの金属依存性から粘性の原因(すなわち降着を規程する物理)を特定できる可能性がある。次に、2)降着率の年齢変化を積分することで総降着量を導出し、典型的な円盤質量との比較からその何%が降着によって消失したか(残りの%が散逸によって消失したことになる)を明らかにし、降着と散逸のどちらがどの程度円盤進化に寄与しているかを見積もる。最終的に、3)同じく降着率の年齢変化からガス円盤の寿命を算出し、われわれの先行研究(ダスト円盤の寿命)と同様に金属量に対して寿命が大きく変化するかを調べる。以上のように円盤進化の基本的プロセスの金属量依存性を明確にすることから、金属量が円盤進化過程に、引いては惑星形成へどのように影響するかを考察する。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 中質量星の円盤寿命2013
Author(s)
安井千香子
Organizer
原始惑星系円盤の進化と惑星系形成」研究会
Place of Presentation
白馬ロイヤルホテル(長野)
Year and Date
2013-02-18 – 2013-02-22
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