2012 Fiscal Year Annual Research Report
生体組織構造変化の計算モデルの高度化と超音波画像による病変定量診断手法への展開
Publicly Offered Research
Project Area | Computational anatomy for computer-aided diagnosis and therapy :Frontiers of medical image sciences |
Project/Area Number |
24103705
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
蜂屋 弘之 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (90156349)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 計算解剖学 / 医用超音波 / 定量診断 / 組織鑑別診断 / びまん性肝疾患 / レイリー分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,「超音波定量診断学」及び「計算解剖学」の構築のため,病変により変化する生体組織音響構造のモデルと超音波画像の計算機シミュレーション手法の高度化,さらに得られた画像変化の知見から,臨床的な病変超音波画像の理解と定量診断手法の確立を行うことを目的としている。そのため,1.病変組織の音響構造のモデル化と超音波画像の計算機シミュレーション手法の高度化,2.臨床超音波画像と計算モデル画像の比較による超音波画像の理解,3.超音波画像の理解に基づく定量診断手法の確立,を行い,超音波医用画像分野の計算解剖学の確立と診断支援の基礎を築く。 平成24年度は,病変により変化する生体組織音響構造の計算モデルの高度化と臨床画像との系統的な比較による超音波画像理解を試みた。まず,解剖学的知識と病変組織音響特性の測定結果を組み合わせ,超音波散乱体配置を正常組織構造から病変組織へと再配置し,病変が進行していく様子を段階的に表現した。散乱体が,均質で高密度に分散した臓器の場合,スペックルパターンと呼ばれる斑紋状の特徴的な超音波画像が生成され,病変の進行とともにこのパターンが変化するが,開発した散乱体モデルから求めた超音波画像の検討から,画像の振幅分布より肝病変組織の線維量を推定できることがわかった。さらに,種々の肝病変の病理組織画像から線維組織を抽出し,線維組織,正常組織に配置する散乱体密度比を変えた散乱体分布を作成し,この散乱体分布から超音波画像を生成し,線維パラメータの定量評価を行う,臨床的状況に近い検討も行った。肝病変の病理組織像と生成された超音波画像の振幅分布を比較したところ,超音波画像の分解能の影響により,線維推定量が実際より少なく推定される傾向があることがわかった。以上,超音波画像中に含まれる生体組織構造の情報の性質が明らかとなり,定量診断手法確立のための基礎データを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
病変により変化する生体組織音響構造の計算モデルの高度化と臨床画像との系統的な比較による超音波画像理解が24年度の目標であったが,肝臓組織が病変により変化していく計算機シミュレーションモデルを作成することができ,このモデルによる超音波画像と病理組織像を利用した超音波画像の検討により,臨床超音波画像に含まれる情報の性質が明らかとなり,おおむね目標を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,まず, 病変の音響構造モデルによる画像と臨床画像の比較を系統的に行い,画像に表れる特徴量の変化について詳細な定量評価を行う。超音波画像は,散乱体が均質に分散し,散乱点密度が高い臓器の場合,スペックルパターンと呼ばれる斑紋状の特徴的な画像となるが,病変の進行とともにこのパターンが変化することを示してきた。レイリー分布によりこのような画像の振幅確率密度を表現できることが知られているが,最近われわれは肝炎や肝硬変などのような線維化が肝臓全体に進行するびまん性肝疾患では,複数のレイリー分布を組み合わせることで,超音波反射信号の振幅分布を極めてよく表現できることを臨床データを基に示してきた。このようなパラメータの変化が,軽度の疾患や,微小な腫瘍のような組織にも適用できるのかなど,検討すべき項目は多く,種々の疾患の音響構造データモデルを用いて検討する。それとともに,収集されている超音波臨床画像をさらに充実させるため,臨床画像の収集を進め,データベース化する。 次に,臨床画像から生体組織の音響構造変化を定量的に求める逆問題について検討し,病変の定量診断手法の確立を行う。臨床画像から定量的な情報を求める方法については,特定の病変についてはいくつかの初期検討をすでに示した。肝病変でレイリー分布からの逸脱度を判定基準に線維組織の抽出を行う方法では,臨床超音波画像から線維化部分を抽出する処理により,生検による組織検査の結果に対応した結果を得ているが,定量的な比較は不十分である。このような処理を,軽度の病変でも安定に行うための手法について考察を進める。これまでにいくつかの手法を提案しているので,高度化した計算機シミュレーションにより得られた進行するさまざまな病変の各段階での超音波画像から頑健な処理手法を検討する。
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Research Products
(22 results)