2012 Fiscal Year Annual Research Report
カチオンーπ相互作用に基づく分子認識型光増感触媒の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
24105508
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
山田 眞二 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (30183122)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | カチオンーπ相互作用 / 分子間相互作用 / Norrish TypeII 反応 / 有機光反応 / 立体選択的合成 / 有機触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
触媒による立体選択的光反応の基質としてベンジルオキシベンゾフェノンおよびアセトフェノン類について、Norrish TypeII反応を検討した。触媒として、ピリジニウム、キノリニウム、イミダゾリウム、アンモニウムなどの種々のオニウム塩について検討を行った。その結果、ピリジニウム、キノリニウムなどは消光剤として作用し、触媒として利用できないことがわかった。イミダゾリウムなどのイオン液体を用いると、trans選択性の向上が見られたものの十分満足の行く選択性は得られなかった。一方、アンモニウム塩を用いたところ、高いtrans選択性が見られた。そこで、アンモニウム塩の鎖長、対アニオンを検討した結果、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)が良好な結果を与えた。 TBAFと基質との間の相互作用を明らかにするため、TBAFの当量数の1H NMRケミカルシフトに及ぼす影響を調べたところ、当量数の増加に伴い特定のプロトンが低磁場シフトしたことから、分子間相互作用の存在を確かめることが出来た。選択性は次のように発現するものと考えられる。基質のカルボニル基およびベンゼン環とテトラブチルアンモニウムとの二種類のカチオン―π相互作用により特定のコンプレックスが生成し、光照射によって励起したカルボニルによるベンジル位水素の引き抜き、およびそれに続くラジカル同士の閉環の際、分子間相互作用により立体配座が固定され、trans体が優先的に得られたものと考えられる。このときフッ化物イオンは、水素引き抜きによって生成したヒドロキシ基との水素結合に関与しているものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベンジルオキシベンゾフェノン類のNorrish TypeII 反応において、アンモニウム塩が選択性向上に有効であることを見出したことは、当初の計画の最も重要な部分である触媒開発の基盤部分を達成したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、反応機構を明らかにするため置換基効果の検討を行い、さらに共同研究により計算手法を用いてアンモニウムと基質との相互作用の存在を確認する。その上で、エナンチオ選択性を発現できるキラルアンモニウム塩の開発を行う予定である。将来的には、触媒量を減らせるように、増感効果を有するキラル触媒の開発を目標にしている。
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