2012 Fiscal Year Annual Research Report
次世代型多機能ハイブリッド有機触媒の創製と反応
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
24105509
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
矢倉 隆之 富山大学, その他の研究科, 教授 (70220126)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / ハイブリッド / 超原子価ヨウ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はすでに,共に触媒として作用する有機ラジカル酸化剤であるTEMPOと超原子価ヨウ素酸化剤を連結した新規な有機ハイブリッド触媒を設計,合成し,アルコール類の酸化反応に有効であることを明らかにした。本触媒を用いると,これまでその反応性の低さから用いることのできなかった過酢酸を共酸化剤として用いることができた。過酢酸は安価で大量入手が可能で,しかも酸化反応終了後は酢酸になるため,経済性,廃棄に問題がない。 そこで,より活性の高いハイブリッド触媒の創製を検討した。TEMPOと超原子価ヨウ素酸化剤部位をつなぐリンカーならびにスペーサーを種々変更して,その触媒活性の評価を行なった。リンカーとして両触媒部の空間的距離を固定できるフタル酸や4,4’-ビフェニルジカルボン酸,分子の配座の自由度を高くするコハク酸などの直鎖ジカルボン酸を用いた。また,リンカーと触媒部をエステル結合あるいはアミド結合で連結するスペーサーや,ヨードベンゼン部の電子状態を変化できるようにアシルオキシ基やアルキル基,アルコキシ基などを含むスペーサーを用いた触媒を合成した。その結果,ヨードベンゼン環上の置換基がアシルオキシ基となる場合は,リンカーとして自由度の高いコハク酸を持つ触媒が最も触媒活性が高かったが,アルコキシ基を持つ場合はフタル酸が最も良い結果を与えた。中でもリンカーとしてフタル酸を,スペーサーとしてエチレンジオキシ基を持つ触媒を用いると,もっとも短時間でアルコールの酸化が終了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の2つの課題を検討した。 1)一つの反応に含まれる複数の触媒サイクルを回すタンデム型ハイブリッド触媒を用いる反応 2)複数の連続する反応を触媒するドミノ型ハイブリッド触媒を用いる反応:ロジウム触媒C-H挿入反応への適用 1)についてはほぼ初期の目的であるTEMPO酸化でのリンカーおよび共酸化剤の検討を達成し,さらに超原子価ヨウ素を基盤とする新しい触媒の検討も行ない,新規触媒を見出してる。しかし一方,2)については,難行している。それゆえ,全体としてはおおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)一つの反応に含まれる複数の触媒サイクルを回すタンデム型ハイブリッド触媒を用いる反応:新超原子価ヨウ素酸化剤の創製とハイブリッド化の検討 2)複数の連続する反応を触媒するドミノ型ハイブリッド触媒を用いる反応:ロジウム触媒C-H挿入反応への適用 1)については,新たに見出した超原子価ヨウ素を基盤とする新しい触媒のさらなる活性化とハイブリッド化を検討する。2)については,溶媒や添加剤など,さらに検討を重ね,新触媒を見出す。
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