2012 Fiscal Year Annual Research Report
キラルビナフチルジスルホン酸を用いる高活性キラル有機分子触媒の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
24105512
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
波多野 学 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20362270)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / 不斉触媒 / ブレンステッド酸 / スルホン酸 / プロトン |
Outline of Annual Research Achievements |
C2対称性をもつシンプルで安価なキラルビナフチル化合物は、配位子や有機分子触媒として多くの不斉触媒反応で用いられている汎用性と実績のある不斉源である。特に有機分子触媒におけるブレンステッド酸性の強さは触媒活性を特徴づける大きな要因であることから、申請者はキラルビナフチルジスルホン酸(BINSA)に着目している。本年度は、SO3H基に由来するプロトンの授受を含む酸・塩基複合型触媒を創製した。BINSAに対してアキラルなアミンを加えることでBINSAの不斉場をアンモニウム塩全体に伝達させる。特に今年度は、嵩高いピリジンを用いて、π-π相互作用による比較的剛直な不斉場を構築する触媒を創製した。この触媒は剛直な特長を持つため、芳香族置換基のキラル・キャビティーを活性中心近傍に構築できる。これにより、ジアステレオ選択的・エナンチオ選択的な高次選択性制御が必要となるイミンやカルボニル化合物に対する不斉付加反応を基軸として検討した。その結果、イミン類に対するアミド類の不斉付加反応(光学活性アミナール合成)に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、これまで世界で初めてのキラルBINSA合成とそれらを用いる不斉有機触媒反応開発の研究を重ねてきた。その後、世界各国の研究グループにより、BINSA誘導体の開発が盛んになってきた。本申請研究は、BINSA開発を牽引する役割を担うものである。特に本研究では、新規BINSA触媒の創製と、それらを用いる高効率的な不斉触媒反応の開発を行なっている。酸・塩基複合型触媒、第4級オニウム塩触媒、3,3’置換触媒、など様々なタイプの有機触媒、有機イオン触媒をシステマティックに設計し、独創的な不斉有機触媒反応の開発を行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
3タイプの有機触媒をシステマティックに設計し、独創的な不斉有機触媒反応へと展開する。「酸・塩基複合型触媒の開発」にあたっては、SO3H基に由来するプロトンの授受を含む酸・塩基複合型触媒を創製する。強酸性のスルホン酸由来のアンモニウム塩は、完全に中和されることなく、Br#248;nsted酸としての触媒活性がある。BINSAの3,3’位は無置換のまま嵩高い塩を形成させることで、3,3’位の置換基導入に匹敵する独創的な触媒設計を鍵とする。C2対称のBINSAのシンプルさが、基質にあわせてオーダーメイドできる自由度の高い酸・塩基複合型触媒の創製に繋がることが特色である。「第4級オニウム塩触媒の開発」にあたっては、プロトン授受を含まない第4級アンモニウムや第4級ホスホニウムを含む中性イオンペア触媒を創製する。スルホナート(SO3-)は強酸の共役塩基であり、弱Br#248;nsted塩基性であるが、BINSAオニウム塩は2つの隣接するスルホナート基によって実質の塩基性度は向上する。相間移動触媒の機能とは全く異なり、2つのスルホナートを鍵として嵩高いカチオン部位との相互作用で触媒の不斉場を劇的に増幅させる点が独創的である。「3,3’置換触媒の開発」にあたっては、3,3’位へ効率的に置換基を導入法を開発し、無修飾のSO3H基を持つ3,3’置換BINSAを創製する。2つの強酸性SO3H基を用いて同時活性化できる革新的不斉触媒反応を開発する。
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