2012 Fiscal Year Annual Research Report
オキシド化合物を不斉有機分子触媒とする立体選択的炭素炭素結合形成反応の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
24105527
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中島 誠 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (50207792)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機分子触媒反応 / 不斉合成反応 / ホスフィンオキシド / アルドール反応 / エナンチオ選択性 |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれは有機分子触媒としてN-オキシドやホスフィンオキシドを基本骨格とした様々な化合物を合成し、その触媒活性の評価を行ってきた。しかし触媒の活性に本質的に基質の構造に依存するため、様々な構造の触媒を効率的に合成する必要がある。今年度は、DIOPO触媒を基本骨格としたモジュラリティーを持つ(構造修飾性が高い)ホスフィンオキシド触媒を設計・合成し、それら触媒のライブラリーを作成した。また、従来のものを含め、それらの触媒を用いた新たな高立体選択的タンデム型反応の開発を行なった。例えば、複数の反応点をもつカルボニル化合物を用いて、連続して2回のアルドール反応が同じ炭素に2度反応する二重アルドール反応では最高97% eeの高いエナンチオ選択性で、さらに異なる炭素に2度反応する二重アルドール反応では最高98% eeの高いエナンチオ選択性で目的物を得ることに成功した。また、その低い反応性から立体制御が困難とされていた2つのケトン間の立体選択的アルドールの開発を行なった。本反応では、加える試薬の順序を変えるだけで、どちらのケトンを供与体としどちらのケトンを受容体とするかを制御することができることが大きな特徴である。また、われわれはすでに、金属水素化物を用いずに、アミンをヒドリド源とする還元反応をすでに開発しているが、これを上記の有機分子触媒反応を組み合わせて、立体選択的な共役還元反応および還元的アルドール反応を開発した。今後、上記の反応群の立体選択性の改善や、これらを利用した生物活性天然物の合成を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の当初の目的では、いくつかの新しい触媒を設計する予定であったが、実際には触媒のモジュラリティーを考慮した合成経路を考慮した設計を行った。そのため多種の触媒を系統的に合成できるようになったことから、DIOPO誘導体に関してはライブラリーまで作成することができた。ケトン間のアルドール反応に関しては、高いエナンチオ選択性が実現できたのみならず、加える試薬の順序で供与体・受容体を識別できるまでに至った。また、アミンをヒドリド源とする還元反応は、われわれの不斉アルドール反応と組み合わせて、金属試薬を全く用いない、還元的不斉アルドール反応にまで成長し、高い化学収率・不斉収率で目的物が得られるようになった。さらに、二重アルドール反応をはじめとするタンデム反応に関しては、初年度は同じ炭素に2回反応する形式と異なる2つの炭素にそれぞれ反応する形式の一方のみでも開発できればよいと考えていたが、実際には両方の形式で良好な結果が得られ、その成果をAngewandte Chemie International Editionに掲載された。これらは当初予期しなかった好成果であり、当初の計画以上に研究が進展していることを如実に表すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果は極めて大きかったが、一部の反応においては、選択性が必ずしも十分ではないものがあった。特に、エナンチオ選択性だけでなく、ジアステレオ選択性を改善し、実用的な反応へと熟成させたい。さらにそれらの反応を活用して、生物活性物質の合成を行うことを予定している。具体的には、同じ炭素に2度反応する二重アルドール反応を用いた光学活性ジヒドロピラノン誘導体の不斉合成、及び、異なる炭素に反応する二重アルドール反応を用いた抗酸化活性や抗腫瘍活性が期待されるエリカノンの短段階不斉全合成を計画している。アルドール-Tishchenko反応に関しては、初年度、キラルなリチウムビナフトラートを触媒とすることで高立体選択的に1,3-ジオール誘導体を得ることに成功しているが、次年度はオキシド化合物を利用した有機分子触媒反応へ展開したい。また、昨年度開発に成功した2種のケトン間の分子間不斉アルドール反応を拡張して、ジケトンの分子内アルドール反応に適用して高立体選択的に環状ケトンを合成し、これも生物活性物質の不斉全合成へ応用したい。さらに、昨年度に開発したアミンをヒドリド源とする還元的不斉反応アルドール反応を、βシアノアミンを用いることで、不斉シアノ化反応などの新しい炭素炭素結合形成を実現する反応へ拡張する。触媒設計に関しては、次年度は、従来にないらせん骨格を有した有機触媒を設計合成して新たな触媒の骨格を創製し、その独自な特徴を踏まえてこれを上記の反応群へ適用する予定である。
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Research Products
(30 results)