2012 Fiscal Year Annual Research Report
不斉有機触媒反応を鍵工程とした生物活性アルカロイドの効率的全合成研究
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
24105528
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
石川 勇人 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (80453827)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機触媒 / アルカロイド / 生合成模擬的合成 / 水中反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物由来モノテルペノイドインドールアルカロイド類および主に細菌類から見出されているピロリジノインドリンアルカロイド類はアミノ酸の一種であるトリプトファンから派生しているアルカロイドであり、種類が多い事、構造が多彩な事、極めて顕著な生物活性を有している化合物が多く見出されている事が知られている。本研究では生合成模擬的な手法および不斉有機触媒を駆使する事により、統一的にこれらアルカロイドを合成する事を目的に研究を行った。ピロリジノインドリンアルカロイド類の合成において、市販のトリプトファンエチルエステルから独自に開発した生合成模擬的な水中での二量化反応を鍵工程として、WIN 64821、ナセセアジンB、ジトリプトフェナリンの全行程2ポットもしくは3段階合成を達成した。2ポット合成においては合成に使用した溶媒は環境に水とエタノールのみであり、非常に効率的な合成となっている。また、本合成の中間体に不斉有機触媒としての機能を世界に先駆けて見出した。この中間体は更なる化学変換が容易であり、新たな不斉有機触媒開発へと展開できる。一方、モノテルペノイドインドールアルカロイド類の統一的合成において、鍵中間体となるガイソチザールを合成の全合成研究を行った。鍵工程として、効率的Stillカップリング反応および、不斉有機触媒による不斉ドミノ不斉マイケル/ヘミアミナール化反応を新規に開発した。不斉ドミノ不斉マイケル/ヘミアミナール化反応では既存の有機触媒では低い不斉収率であったため、新たに触媒の設計、合成を行った。10種類以上の触媒を合成し、不斉反応に付したところ、極めて高い不斉収率で目的物を与える新規触媒を見出した。また、抗HIV活性を有するペトロシンの全合成研究を行った。不安定なピリドン誘導体を種々合成し、不斉反応へと展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案していたガイソチザールの合成においては、目標であった不斉反応の開発を達成した。また、既知の触媒ではうまくいかなかった事が功を奏し、独自に設計した新規触媒を見出す事に成功した。この触媒は今後様々な不斉反応に適用できる可能性があり、研究の幅を大きく広げたといえる。また、ピロリジノインドリンアルカロイドの短段階合成に成功し、そこから、新規不斉触媒の開発に繋がっている。当初の計画には無かった付加的な成功であるが、本結果もこの分野の推進に大きなインパクトを持つと確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
モノテルペノイドインドールアルカロイドの統一的全合成に向けて、ガイソチザールの全合成を行う。現在用いている不斉反応は化学収率、不斉収率ともに良好であるが、反応時間の削減、触媒量の低減という観点から更に最適かの必要があるため、引き続き検討を行う。同時に、合成ルートを残り数段階進め、全合成を達成する。グラムスケールでガイソチザールを合成した後、生合成模擬的反応による各種アルカロイド合成へ展開する。また、今回新たに見出した数種の新規触媒の有用性を証明するため、これまでの触媒では十分な不斉収率が得られなかった反応系を用いて検討を行う。さらに、光学活性ピペリジン環を有する天然物を統一的に合成する手法として、ピリドン誘導体を基質とした不斉反応の開拓を行う。最終的に抗HIV活性を有するペトロシンの全合成へと展開する。
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Research Products
(4 results)