2012 Fiscal Year Annual Research Report
新薬創出に向けた有機分子触媒を用いる生物活性化合物の合成
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
24105529
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
鈴木 由美子 上智大学, 理工学部, 准教授 (20295546)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機化学 / 合成化学 / 有機触媒化学 / ヘテロ環化学 / 創薬化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は有機分子・含窒素複素環式カルベン(NHC)の触媒反応と種々の有機分子触媒反応を利用した医薬品探索・開発に直結する実践的合成法の開発を目的とし、以下の3項目を検討した。 1)生物活性ポリフェノール型キサントン天然物の合成: termicalcicolanone A および citreamicin δ の全合成研究を行った。 NHC触媒反応を用い、中間体であるベンゾフェノン誘導体を合成した。termicalcicolanone A の合成研究ではキサントン環の構築まで達成できた。 2)医薬品に頻出する複素環骨格のワンポット合成法開拓: イミドイルクロリドとアルデヒドとのNHC触媒反応後、精製したα-ケトイミンの加水分解、オルトフェニレンジアミンとの環化反応を連続して行い、ワンポットでキノキサリンを合成する方法を確立した。また、α-ケトイミンとエチレンジアミンとの縮合反応および酸化(芳香化)反応を連続して行うことで、ピラジンのワンポット合成も達成できた。イミンを加水分解することなく、イミン窒素原子上の2-フルオロフェニル基をアンモニアとの環化反応に利用し、よりアトムエコノミー的に優れたキノキサリン合成法も開発できた。 3)抗がん活性化合物 PVHDの構造最適化を目指した誘導体合成: キナゾリン骨格の2位へ多種の置換基を導入するため、カップリング反応に適した脱離基(Cl)を持つ中間体の効率的合成法開発を検討した。また、この中間体を経由して新規キナゾリン誘導体も合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)生物活性ポリフェノール型キサントン天然物termicalcicolanone A の合成は、Claisen転位反応、ピラン環構築などの数工程で達成できると考えている。24年度はtermicalcicolanone B の合成研究を進めることはできなかったが、当初の計画では25年以降に予定していたcitreamicin δの合成研究に取り掛かることができた。citreamicin δのオキサゾリジノン骨格構築反応を検討するためのモデル化合物の合成法も確立した。 2)イミドイルクロリドとアルデヒドとのNHC触媒反応後、精製したα-ケトイミンの加水分解、ジアミンとの環化反応を連続して行い、ワンポットでキノキサリンやピラジンを合成する方法を確立できた。この方法を用いて種々の置換基を持つ新規キノキサリンおよび新規ピラジン誘導体を合成できた。α-ケトイミン窒素原子上の2-フルオロフェニル基をアンモニアとの環化反応に利用することで、位置選択的に任意の置換基をキノキサリン骨格に導入することが可能な合成法も開発できた。 3)抗がん活性化合物 PVHDの構造最適化を目指した誘導体合成では、NHC触媒反応にて合成したキナゾリン中間体の2位脱離基(Cl)を利用し、鈴木ー宮浦カップリング反応により、新規キナゾリン誘導体を合成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)生物活性ポリフェノール型キサントン天然物の合成termicalcicolanone A の全合成達成を目指し、現時点での合成最先端の中間体からの合成を進める。 Claisen 転位反応続くピラン環の構築反応を検討し、最終的には一段階で両反応を同時に進行させる条件を見出す。これまでの合成経路の収率向上も同時に遂行する。termicalcicolanone B の全合成研究にも取り掛かる。citreamicin δ合成の予備的研究として、キラル有機酸などの有機分子触媒反応を用いたモデル化合物を用い、立体選択的オキサゾリジノン環構築の検討を行う。 2)医薬品に頻出する複素環骨格のワンポット合成法開拓前年度までに開発した合成法を利用して、多種の置換基を持つキノキサリン誘導体、ピラジン誘導体を合成する。また、同じくNHC触媒反応により生成するα-イミノケトンを中間体とする、インドール環の合成法を開発する。α-イミノケトンの窒素原子上置換基の存在を利用した、多置換イミダゾールの位置選択的合成法開発を目指す。当初の計画に加え、NHC触媒によるイミドイルクロリドのアロイル化反応において、アシル化剤として2-フルオロベンズアルデヒド類を用い、その後精製したイミノケトンのフッ素原子を足掛かりとして環化反応を行うことでインドール環の構築を行う。 3)抗がん活性化合物 PVHDの構造最適化を目指した誘導体合成NHC触媒反応を利用してキナゾリンの4位に選択的に炭素鎖を導入後、2位のクロロ基あるいはブロモ基を脱離基として利用し、カップリング反応により、多数のキナゾリン化合物を合成する。合成した化合物の抗がん活性試験を行う。
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Research Products
(8 results)