2012 Fiscal Year Annual Research Report
不斉ハロラクトン化反応と生物活性天然物の効率的合成
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
24105530
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
濱島 義隆 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (40333900)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機化学 / 不斉合成 / 有機触媒 / 天然有機化合物 / ハロゲン / ブロモラクトン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,「有機塩基触媒を用いた不斉ハロラクトン化反応」を開発し, それを鍵反応とする「生物活性天然物の効率的合成法」の確立を目的とする。具体的には, 不斉四置換炭素を含む連続不斉中心を特徴とする天然物およびその類縁体の効率的合成法を開発する。また, 全合成研究において見出された不斉触媒反応を発展させ, 利用価値の高い不斉反応を実現する。 本年度は, これまでの先行研究で報告されている不斉ハロラクトン化反応の基質一般性を拡大し, 天然物合成へと応用することを目標とし, 非対称化を伴う不斉ブロモラクトン化反応を検討した。その結果, これまで報告されていなかった様式の反応を高エナンチオ選択的に進行させる触媒系を見出した。 まず, 安息香酸から容易に合成可能な環状ジエンを基質として用い, 種々条件検討を行った。基質のカルボン酸を不斉環境に捕捉して活性化する目的で, 触媒として様々なキラルアミンのスクリーニングを行った。その結果, リンカーにて二量化されたシンコナアルカロイド(DHQD)2PHALを触媒として, N-ブロモスクシミドをハロゲン化剤として用いた場合に高収率、高エナンチオ選択性にて目的とするブロモラクトン体が得られた。本反応では, 基質の第一級水酸基の保護基がエナンチオ選択性に大きく影響した。また, 有機触媒を擬エナンチオマーである (DHQ)2PHAL に変更したところ, ほぼ同等のエナンチオ選択性にて鏡像異性体を得ることができた。 本ブロモラクトン化反応は第四級炭素を含む三連続不斉中心を一挙に構築できるため非常に有用な反応である。現在, この反応を鍵とするSphingofungin Eの不斉全合成を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画は, 不斉四置換炭素を含む連続不斉点を有する天然物合成に向けて, 基盤となる不斉触媒反応を開発することである。研究実績の概要に記した通り, 必要とされる反応の開発に成功した。更に, 別途進めていた天然物のラセミ体合成にこの反応を適用し, 鍵中間体を光学活性体として得ることに成功した。以上のように、ここまでの進捗状況は申請の段階での計画とほぼ一致している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 本年度開発に成功した不斉反応の有用性を示すべく, 応用研究として生物活性物質の合成研究を展開する。現在, 免疫抑制活性を有する sphingofungin 類の合成研究を行っている。次年度の目標として, この化合物の不斉全合成を達成し, 誘導体合成にも適用可能な効率的合成法を確立する。 また, sphingofungin 類の全合成の知見をもとに鍵中間体であるシクロへキセン誘導体の更なる変換反応を検討し, 有用キラル合成素子を新たに創成する。この基礎研究を基盤として, 不斉四置換炭素を有する生物活性化合物の合成に取り組む。これにより反応の有用性が確認されるとともに, 他の生物活性物質の新規合成法が開拓される。 一方, 当該反応の更なる深化も, 複雑分子の合成に応用する上で重要な課題である。現在までに開発されている触媒的不斉ハロラクトン化反応は, 利用できる基質が限定されている。従って, より一般的で多くの官能基に高い許容性を示す変換反応への飛躍が必要である。本年度に開発した反応はこれまでとは全く異なる「非対称化」という概念に基づいている。この概念に加え, 新たにポリエン環化の知見を考慮した基質設計を行うことにより, 新規な骨格を有する分子変換法を実現する。また,不斉ハロラクトン化の反応機構は, 未だ不明な点が多い。汎用性の高い反応へと発展させるためにも, 機器分析を中心とする反応機構解析研究を行う予定である。
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Research Products
(10 results)