2012 Fiscal Year Annual Research Report
エナミン機構に基づく有機分子触媒反応:高性能触媒の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
24105535
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
田中 富士枝 沖縄科学技術大学院大学, 生体制御分子創製化学, 准教授 (50260203)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / 有機合成 / 合成化学 / 不斉合成 / エナミン / アミン / 環化反応 / スピロ化合物 |
Research Abstract |
本課題では、エナミン機構に基づき反応を加速する不斉有機分子触媒を設計、創製すると共に、それらを用いる反応法を開発することを提案した。生物活性分子や生命機能解明に用いる機能性分子の開発のためには、生体分子と相互作用するための構造単位として、酸素や窒素を含む官能基、ヘテロ環等を含む多様な分子を合成することが必要である。従って、多様な置換基や官能基を有する一連の化合物を、穏和な条件下、簡単に、短工程で合成する方法を開発することが望まれる。本研究では、アミンを触媒とし、反応系中でエナミンを生成することを鍵として結合生成反応を加速する反応およびその触媒の開発、および、高活性触媒を得るための戦略の開発について検討した。 1.エノンとイサチンの不斉ヘテロディールスアルダー反応の開発 テトラヒドロピラノン構造およびスピロオキシインドール構造は、生物活性を示す分子やその合成中間体によく見られる構造であり、これらを組み合わせた分子骨格上に、種々の置換基や官能基を配置した分子群は、生物活性等を示す分子を探索、開発する上で有用であると期待される。反応系中、エノンからエナミンを生成させ、これをジエン成分とし、イサチンとの [4+2] 環化反応、あるいは、対応するアルドール反応-オキシマイケル反応の経路により、高ジアステレオおよび高エナンチオ選択的にテトラヒドロピラノン環を構築することにより、種々の置換基を有するスピロオキシインドール誘導体を合成する方法を開発した。また、本反応を可能にする触媒として、アミン、酸、チオウレアの三成分から成るアミン触媒システムを開発した。 2.反応の進行を評価する方法の開発 高活性触媒や早い反応のための条件の探索に有用である、反応の進行を、蛍光の増強を測定することにより評価するシステムを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来、エノン由来の原料を用いテトラヒドロピラノン環を合成するヘテロディールスアルダー反応では、エノンをあらかじめシリルエノールエーテル等のジエンに変換しておくことが必要であった。本研究にて、種々の置換基を有するエノンを直接原料とし、高ジアステレオおよび高エナンチオ選択的不斉ヘテロディールスアルダー反応を行なう方法を世界にさきがけて開発することに成功した。あらかじめジエンを生成する方法に比べ、本開発の方法では、保護脱保護の過程が不要であるためステップ数が少なくなり、アトムエコノミーに優れている。これらの優れた特徴を持つ反応を効率的に開発するために、比較的合成、入手が容易な化合物3種の組み合わせにより触媒反応を行なうという戦略をとり、本反応についての開発というだけでなく、触媒開発の有用な戦略を提示することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
開発したエノンとイサチンの不斉ヘテロディールスアルダー反応について、意図する生成物を与える反応を進行させること、その反応加速、立体選択性の発現に重要であるかを明らかにする。また、基質応用性を拡張するための触媒システムを開発する。これまでに明らかにした知見を活用し、エナミン機構で進行する新規反応および有用な触媒を開発する。これらにより、より優れた触媒設計、触媒開発を可能にする研究を推進する。
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