2012 Fiscal Year Annual Research Report
GSOシンチレータの放射線損傷回復の理解とその能動的回復の挑戦
Publicly Offered Research
Project Area | Quest on new hadrons with variety of flavors |
Project/Area Number |
24105704
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
さこ 隆志 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教 (90324368)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 放射線 |
Outline of Annual Research Achievements |
GSOシンチレータは高い放射線耐性を持つ無機シンチレータである。代表者らの先行研究によりGSOシンチレータは10kGy程度の被曝で20%の光量増加をし、この増加は室温で4時間の時定数で回復することが知られている。また、各種無機シンチレータの放射線損傷は、紫外、可視、赤外線の照射や加熱によって回復が加速することもしられている。本研究はいまだ試験がなされていない、GSOシンチレータの赤外線照射による損傷からの回復を試みるものである。 24年度は、試験用のGSOシンチレータを購入し、名古屋大学工学部コバルト60照射室において1.3MeVのガンマ線を照射することでシンチレータに放射線損傷を与え、その回復を測定する試験を行った。照射室では4時間の照射で10kGyの被曝を与えた。照射後速やかに実験室の暗箱に移動し、被曝無しサンプル、被曝ありで自然回復させるサンプル、被曝ありで赤外線を照射するサンプルの3種類のサンプルについて、長時間シンチレータの反応を測定した。キセノン光源からフィルターで330nmの紫外線をとりだしてGSOシンチレータに照射し、430nmの可視発光をフィルターで選び出すことでシンチレータの応答を測定した。また、赤外線の照射によりシンチレータ温度が高くならないことを事前に確認、光源の発熱によって暗箱内の温度が大きく変わらないように放熱に注意した。 照射と測定システムは順調に稼働し12時間の測定を安定して自動で行うことができた。しかし、10kGyで期待される20%の増光を確認することができず、その回復を試験することができなかった。測定全体の問題点を洗い出すため、25年度始めに、放射線損傷の大きいプラスチックシンチレータも加えて同様の再現実験から開始する計画をたてた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の目標は、コバルト60からのガンマ線照射による放射線損傷からの回復を測定することであった。照射から測定までのシステムは完全に完成しており、一度の測定に成功している。期待された増光が見られなかったことは予想外であったが、これもGSOシンチレータの特性の一端であるかもしれない。先行研究による増光の確認は重粒子線照射に対する応答であった。ガンマ線照射に対する増光も文献で報告されているが、照射条件を慎重に比較することで、増光の未知の特徴を理解することができるはずである。測定システムは非常にシンプルで、システム上の問題はないと思われるが、25年度初期にはシステムの検証実験も予定している。 本研究は先行研究を主導した博士課程後期大学院生の助言のもと、博士課程前期大学院生が主体的になって実施した。彼らは25年度の追試験と重粒子照射計画にも積極的に関与しており、目的のひとつであった大学院生の教育は成功裏にすすんでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に増光を確認できなかった点を検証するため、放射線損傷の大きなプラスチックシンチレータを用いて同様の試験を行う。プラスチックシンチレータは10kGyの被曝で50%ほどに減光する。この効果を確認することで、被曝が確実におきていることを明らかにする。ガンマ線照射、あるいは回復測定方法に問題がみつかった場合は改良し再実験を行う。 25年度後半には、実績のあるHIMAC加速器における重粒子線照射を通して被曝と回復の測定を行う。粒子線照射では被曝量の測定とシンチレータ応答の測定をほぼリアルタイムで行うことが可能で、両者を確認しながら実験をすすめることができる。被曝サンプルに同様に赤外線を照射して、低強度ビームに対する応答の時間変化を測定する。同時に、被曝と低強度ビームの照射位置を変えることで、発光量とは別に透過率の変化も測定する。
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