2012 Fiscal Year Annual Research Report
超高速細胞配列化と高スループット細胞分化スクリーニング
Publicly Offered Research
Project Area | Hyper Bio Assembler for 3D Celluler Innovation |
Project/Area Number |
24106511
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
安川 智之 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 准教授 (40361167)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 誘電泳動 / 細胞配列 / 表現型 / 免疫捕捉 / 細胞分化 / 細胞分離 / 電気化学顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,「誘電泳動を用いたフレキシブルな超高速細胞配列技術」により3次元細胞培養システムの創生に資する迅速な異種類細胞の配列体作製方法の開発と,この技術を基盤とした細胞膜表面に発現する抗原の表現型(フェノタイプ)を迅速(1分程度)で簡便(蛍光ラベル化不要)に解析する手法の確立を目指している. 交互くし型マイクロバンドアレイ電極と透明電極を3次元的に配置した誘電泳動セルを用い,分散状態の微粒子を数秒と極めて迅速にセル内の様々な位置に細胞パターンを作製した.このデバイスを用いると,異なる位置への微粒子パターンの作製が可能であった.位相や強度を切り替えると,微粒子のラインパターンを迅速で可逆に変換することが可能であった. 誘電泳動による細胞のマニピュレーション技術を用い,迅速で簡便な細胞表面抗原アッセイが可能であることを示した.バンド電極表面上に目的の表面抗原に特異的な抗体が存在すると,正の誘電泳動により集積化された細胞は免疫反応により不可逆的に捕捉され,負の誘電泳動による排除が抑制されてバンド電極上に残り存在比を決定できた.正の誘電泳動による配列化に数秒,免疫反応に1分程度,負の誘電泳動による未反応細胞の除去に30秒程度で1アッセイが可能であり極めて迅速であった.また,表面抗原のラベル化や人為的な洗浄工程を含まない極めて簡便なシステムである.この手法を採用すると,超高速(1分)に表現型を識別し空間的に分離できることを示した. マイクロ電極をプローブとした電気化学顕微鏡(SECM)を用いて,単一細胞に発現する抗原に修飾した酵素(グルコースオキシダーゼ,GOx)活性イメージングを行った.SECMを用いると,ウェル内に捕捉された細胞の表面抗原に修飾されたGOxの活性を評価できるため,単一細胞の抗原量を定量できる可能性があることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に予定していた研究を遂行し,目的を達成できた.3電極を3次元に配置した誘電泳動セルを作製し,誘電泳動を用いて分散している微粒子や細胞を数秒レベルで目的位置に集積化することができた.3電極に印加する交流電圧の強度,周波数および位相を制御することにより,マイクロ空間内の異なる位置に集積化して異なるパターンを作製できた.さらに,電圧印加条件の変換によりパターンを可逆的に変更できることを示した.この結果については,平成25年1月にJournal of Robotics and Mechatronics誌に投稿し,審査員から極めてポジティブなコメントをいただいた.改訂論文を投稿し,現在,審査結果を待っている.配列化細胞のポリビニルアルコールを主成分とする光架橋性ゲル内への包埋固定を行い,異種類の細胞を配列化することもできた. この細胞配列化技術を免疫捕捉による表面抗原発現細胞の分離を行った.HL60細胞に発現するCD33抗原をモデルターゲットとし,わずか2分でCD33陽性細胞を母集団から分離することに成功した.細胞の捕捉方法を調査し,最適化により発現細胞捕捉率85%を達成した.この結果は,平成24年に米国化学会の国際誌であるAnalytical Chemstry誌に投稿し掲載された.また,国際学会で発表し成果の発信を積極的に行っている.分化誘導処理前のHL60(CD13+, CD11b-)および分化処理後のHL60(CD13-, CD11b+)の免疫捕捉にも着手し,リーズナブルな結果を得ている. さらに,電気化学顕微鏡を用い,単一細胞に発現する表面抗原の発現量定量に踏み込んだ.酵素標識細胞からの電流応答の増加が観測され,発現量定量の可能性を示した.単位面積当たりの抗原発現量は細胞の免疫捕捉に関わる抗原-抗体反応数を推測できるため,識別分離システム構築のために有用である.
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Strategy for Future Research Activity |
細胞分化および分化誘導剤スクリーニングへのシステム拡張のため,異なる表面抗原を発現する細胞の混合懸濁液から,両細胞の混合比に対応した捕捉パターンの取得を目指す.昨年度,HL60細胞に発現するCD13およびCD11bについて鋭意検討を行い,分化誘導前ではCD13を,分化誘導処理による好中球ではCD11bを発現していることが確認された. そこで,本年度は,本手法をマルチ識別システムへと応用展開する.まず,バンドアレイ電極に直交した抗体アレイを作製する.PDMS製のマイクロ流路をバンド電極に直交させて配置し,異種類の抗体(抗CD33抗体,抗CD13抗体および抗CD11b抗体)を固定化する.この電極基板を用いて誘電泳動セルを作製し,ヒト前骨髄球性白血病細胞株(HL60)を導入する.誘電泳動により細胞を一括で抗体アレイ上に免疫捕捉し,捕捉位置から表面抗原の発現パターンを得る.このように,本モデル系を用いて,複数の抗体を発現する細胞を迅速に解析できることを示す.ホルボルエステル(TPA),分化誘導効果の低いロキシスロマイシン(RXM)を用いた分化誘導とその誘電泳動による細胞配列を行い,分化誘導剤スクリーニングに適用可能であることを実証する. デバイスの実効面積を30 x 30 mmと拡大し,100万個レベルの細胞を一括で配列し免疫捕捉する.これにより,存在比率1%程度の細胞の識別分離が可能なシステムとする.デバイス内において識別分離した陽性細胞のデバイス外への選択回収を目指し,溶液の導入による捕捉細胞と未反応細胞の分離システムについて検討する.マイクロバンドアレイ電極とネガティブフォトレジストを組み合わせた3次元細胞捕捉ホールアレイを組み合わせ,迅速な細胞のホールアレイ内捕捉と送液による分離を行う. 本研究を通じて得られた成果は,これまでと同様に積極的に学会および国際誌で発表する.
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