2012 Fiscal Year Annual Research Report
反応集積化手法を用いた簡便迅速なフラーレンの触媒的官能基化の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Organic Synthesis based on Integration of Chemical Reactions. New Methodologies and New Materials |
Project/Area Number |
24106704
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金 鉄男 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 准教授 (80431493)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 反応集積化 / フラーレン官能基化 / 触媒プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
<24年度研究計画> 単結合フラーレン二量体は二つのC60骨格が共有結合により直接結合しているため、その二つの骨格の相互作用により興味深い光学的電子的機能が期待されている。しかし、効率的な合成法の不足により、これらのフラーレン二量体は未だ材料科学分野に応用されていない。我々は、モノ置換ヒドロフラーレンのC-H結合活性化による触媒的二量化反応を開発し、Co触媒によるC60のモノアルキル化反応と新しい二量化反応の時間的反応集積法を用いて、中間生成物を分離せずにフラーレン二量体を効率的に合成することにした。 <24年度の成果概要> 1.種々の金属触媒と添加剤の検討の結果、モノアルキルヒドロフラーレンがCu(OAc)2触媒などの酸化剤の存在下室温で、フラーレン二量体がラセミ体とメソ体の混合物として効率的に得られることを見出した。本反応は空気中の酸素が重要な役割を果たしていることも明らかにした。。様々な非極性溶媒と極性溶媒添加剤を検討したところ、ODCB反応溶液に極性溶媒であるDMFを少量添加すると反応が効率的に進行した。種々のベンジル、アルキルやデンドリマー置換基を有するヒドロフラーレンが反応し一般の有機溶媒に対して高い溶解性を有するフラーレン二量体を高収率で得られた。また、Co触媒を用いたモノフラーレン置換反応と銅触媒二量化反応の時間的集積化反応によりフラーレン二量体が効率的得られることも確認できた。 2.種々の塩基触媒と酸化剤の検討の結果、モノアルキルヒドロフラーレンがNaOH触媒と空気酸化剤の存在下室温で、フラーレン二量体が効率的に得られることを見出した。反応溶液に極性溶媒であるTHFを少量添加すると反応が効率的に進行した。また、本反応は空気中の酸素が重要な役割を果たしていることも明らかにした。本反応の遂行により様々な官能基を有するホモ二量体が高い収率かつ高い溶解性で得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で得られた結果は高く評価され、既に国際化学誌Angew.Chem.Ed.Int.とOrganic Letteraの発表された。さらに、銅や塩基触媒を用いたフラーレン二量化反応の開発過程において、系中で触媒により生成するフラーレンモノラジカルが重要な活性種であるであることを明らかにした。同一空間集積化を用いて生成したラジカル活性種をすぐに系中で生じるほかのラジカルや反応剤と反応させるとさらに興味深い有機電子材料としてフラーレン環化体または異なる置換基を有する1,4-二置換フラーレン誘導体の効率的な触媒的合成が可能であることから、本研究の遂行により新たなフラーレン誘導体の合成法の開発が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、時間的および空間的反応集積化方法を用いて、フラーレンの二置換反応の最適化条件を検討する。モノアルキル中間生成物を精製せずに様々な官能基を有しかつ高い有機溶媒溶解性を有するフラーレン誘導体を効率的に合成し、その物性測定を行うことで、新規機能性材料応用への適応性を評価する。 1.本年度では、モノアルキルヒドロフラーレンを用いた触媒的二置換フラーレン合成法を確立する。平成24年度で開発した二量化反応条件の結果に基づき、モノアルキルヒドロフラーレンを基質とし、強い電子供与性を有する芳香環化合物やアミンやアルコルなどを求核剤として、高い酸化活性を有する遷移金属触媒の検討を行う。また、様々な酸素やTBHPなど酸化剤の検討および溶媒と温度効果を検討する。 2.確立した時間的集積化法を用いて様々な求核剤の検討を行う。例えば、種々の電子供与基を有するベンゼン環、インドールなどヘテロ芳香環、置換基を有するアルコール及びアミンなどを求核剤に用いて本方法における官能基の一般性及び汎用性を検討る。 3.モノブロモ体の代わりにジブロモ反応剤を用い、既に報告したCo触媒反応を用いて空間的集積化により様々な環サイズを有するフラーレンの環化付加反応を検討し、効率的な合成法を確立する。 4.得られる様々な二置換フラーレン誘導体と環化体はNMR、X-線構造解析により構造を確認する。また、有機溶媒への溶解性を確認し、UV-visやCVなどの測定を行い、新規有機半導体としての応用を試みる。
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