2012 Fiscal Year Annual Research Report
反応系内発生ホスゲンを用いるペプチドの連続的マイクロフロー合成法開発
Publicly Offered Research
Project Area | Organic Synthesis based on Integration of Chemical Reactions. New Methodologies and New Materials |
Project/Area Number |
24106708
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
布施 新一郎 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (00505844)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ホスゲン / ペプチド / アミノ酸 / マイクロリアクター / マイクロフロー反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、マイクロフローリアクター内で、低毒性かつ安価なトリホスゲンと塩基からホスゲンを発生させて、カルボン酸を活性種へ変換し、さらにこれをアミノ酸と反応させることによりペプチドを合成する手法の確立を目指して研究に着手した。 成果1 マイクロミキサー、溶媒、塩基、当量の最適化 カルボン酸としてL-セリンを用い、まずマイクロミキサーの検討を行った。ジーエルサイエンス社、フロム社、三幸精機社製のT字型ミキサーを検討したところ、三幸精機社製の内径0.25 mmのものが最も熱交換効率が高く、エピメリ化の抑制効果が高いことが判明した。続いて溶媒および塩基を検討した。結果、カルボン酸と塩基を溶かす溶媒としてはDMF、トリホスゲンおよび求核剤を溶かす溶媒としてはアセトニトリルを用いた際に最も良好な結果を与えた。なお、興味深いことに、水を溶媒として用いても、反応成績はさほど低下しないことがわかった。また、DIEAを塩基として用いた時に最も良好な結果を与えた。続いて、カルボン酸、塩基の当量を検討した。当量は反応成績に大きな影響をおよぼすことがわかった。すなわち、カルボン酸を2.5当量まで増やし、塩基量を3当量まで減らすことにより、エピメリ化を抑制しつつ、収率を劇的に改善できることがわかった。本条件では、わずか0.5秒で定量的にカルボン酸が活性化できることが判明した。 成果2 基質適用範囲の実証 確立した最適条件を用いて基質適用範囲を検討した結果、カルボン酸としてエピメリ化を起こしやすいヒスチジンを用いても、エピメリ化を抑制しつつ高収率で目的物が得られ、サルコシンやプロリン等の嵩高い求核剤を用いても良好な成績を与えることが判明した。さらには、水酸基遊離の乳酸をカルボン酸として用いても、高収率で目的物が得られることがわかった。なお、本反応をバッチリアクターで行うと、収率が劇的に低下する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画目標通り、マイクロフローリアクター内で、低毒性かつ安価なトリホスゲンと塩基からホスゲンを発生させて、カルボン酸を活性種へ変換し、さらにこれをアミノ酸と反応させることによりペプチドを合成する手法を確立することに成功した。本手法は活性種の生成までに要する時間はわずか0.5秒であり、アミド化に要する時間もわずか4.3秒である。また、一時間ほどの連続運転で5~10g程度の目的物を得られるため、生産性も良好である。本年度の検討により、目標としていた反応性の低いN-メチルアミノ酸を求核剤として用いても、エピメリ化を起こさず、高収率で目的のペプチドを得られることを実証した。さらには、研究計画書で検討事項に挙げていたエピメリ化を起こしやすい基質であるセリン、システイン、チロシン、ヒスチジンのアミド化に成功した。本手法の適用限界を探るべく、当初の計画にはなかった、さらにエピメリ化を起こしやすいことが知られているフェニルグリシン、乳酸といった基質についても検討を行った。フェニルグリシンのアミド化については、溶媒、ジイソプロピルエチルアミンの当量、温度を再検討することにより、ほとんどエピメリ化を起こすことなく目的物を得ることに成功した。また、乳酸については、二級水酸基を保護することなく用いて目的物をほぼ定量的に、なおかつエピメリ化をほとんど起こすことなく目的物を得ることに成功した。このように、当初計画以上のペースで研究が進捗したため、次年度の研究目標としていたペプチド合成への適用性検証に着手することとした。予備検討を行った結果、テトラペプチドの合成に成功し、今後の検討によりさらに高収率で目的物を得られるようになると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究で最適化した条件を用いてペプチドの合成に取り組む。すなわち、二つのステンレス製T字型マイクロミキサー、三つのシリンジポンプをテフロンチューブにより連結し、これを水浴中に浸してマイクロフロー反応装置を組み上げる。一つ目のT字型マイクロミキサーにおいて、トリホスゲン、ジイソプロピルエチルアミン、カルボン酸のアセトニトリル/DMF溶液を混合して、マイクロミキサー内でホスゲンを発生させ、これをカルボン酸と即時(0.5秒)反応させることにより対応する活性種を生成させる。続いて、2つ目のT字型マイクロミキサーに活性種と求核剤のアセトニトリルを導入してアミド化を進行させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより目的物を単離して収率、エピメリ化率を求める。既に、これまでの初期検討の結果、この方法によりペプチドの合成が可能であることが示唆されている。本年は、エピメリ化を起こしやすいアミノ酸、反応性の低いアミノ酸を基質として用いたペプチド合成に取り組み、本マイクロフローペプチド合成法の有用性を実証する。この際に、前年度までの最適条件では、十分な収率が得られない、もしくはエピメリ化が抑制できないケースが想定しうる。これらのケースについては反応温度、溶媒、塩基の当量といった各パラメータを最適化することにより解決を図る。また、前年度までの研究で、反応系内のIR測定を行うことにより活性種が対称酸無水物であることが示唆された。より求電子性が高いと考えられる酸塩化物を活性種として用いることができればさらなる反応性の低いアミノ酸の導入にも有効であると期待できる。そこで、ホスゲン発生後0.15秒後の反応系内の活性種についても反応系内のIR測定を行うことによりその同定を目指す。
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Remarks |
http://www.apc.titech.ac.jp/~ttakahas/group-2012.html
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