2012 Fiscal Year Annual Research Report
ロタキサン型貫通構造を鍵とする「マクロサイクル触媒」反応系の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Organic Synthesis based on Integration of Chemical Reactions. New Methodologies and New Materials |
Project/Area Number |
24106710
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高田 十志和 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40179445)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | ロタキサン / パラジウム / 酵素様分子触媒 / 空間結合 / 近傍効果 / 分子モーター |
Outline of Annual Research Achievements |
ロタキサンなどの分子群では、そのコンポーネントは特殊な空間的配置にあるため、輪成分中の原子と軸成分中の原子の間の相互作用の結果がその運動性などの特性として顕著に現れてくる。本研究ではロタキサンなどのインターロック分子に遷移金属を固定化し、近傍効果によって現れる相乗的な相互作用を利用した新たな分子変換反応を開発し、その結果をベースとして酵素様分子触媒や直線分子モーター、さらには新しい高分子合成法の構築を目指し検討を行った。昨年度までにマクロサイクル触媒を用いる高分子反応系において、触媒の「トポロジー効果」を見いだしているため、こうした反応系を基盤とした不斉反応への展開や新しい高分子合成法の構築を目指し、 ①マクロサイクル触媒による貫通する高分子鎖の0次反応速度解析 ②不斉な輪分子を有するロタキサンの軸上へのスルースペース不斉選択性 を行った。 ①ではマクロサイクル触媒を用いてヒドロアミノ化反応を検討した結果、その反応速度は高分子基質濃度に依存せず、0次反応的に進行することが明らかとなった。これはマクロサイクル触媒に高分子基質が貫通した構造であるため、一般的な触媒反応よりも高効率で反応が進行することを意味している。 ②では輪成分に光学活性なビナフチル基を導入したロタキサンを合成し、ロタキサン軸分子上のアミンの酸化反応において、不斉選択性が見られた。これは輪成分のキラリティーがスルースペースで軸上の反応点に影響をあたえたためとみられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由)本研究課題では、空間結合を利用した分子内・分子間反応の集積化に焦点をあて、研究を行っている。本年度では従来モデルの深耕や高分子系への拡張に加え、①マクロサイクル触媒による効率的な0次反応系の実現や、②スルースペースでのキラル増幅型ロタキサン触媒系の確立を達成した。 これらの基礎的な知見はこれからの応用研究の礎となる結果である。例えば、マクロサイクル触媒での研究ではマクロサイクルの環サイズによる反応選択性の制御が可能になる。また、キラルロタキサン触媒の開発では、微粒子表面上へ集積することで高効率な触媒系へと変換可能となる。 このように今後の応用展開の元となる結果が得られている現状を考えると、達成度はおおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、本年度の研究成果を基にして、①反応後に立体障害などの要因によって、マクロサイクル触媒が元の反応点へと戻ることができないような反応系や、②反応点の嵩高い置換基をマクロサイクル触媒によって、変換・脱離するような反応系などが設計できれば、輪状成分が1方向に並進する前例の無いリニア分子モーターシステムが構築できると考えられる。 また、キラルロタキサン触媒系での方針としては、スルースペースで転写されたキラル情報として存在する不斉N-オキシドを反応剤として使用し、さらに他の分子へキラル情報を転写する系を確立する。そしてキラルロタキサンの酸化・還元のサイクルに伴う高効率なキラル触媒の開発を行う。
|