2012 Fiscal Year Annual Research Report
制御酸化還元過程を備えた遷移金属触媒による集積反応化
Publicly Offered Research
Project Area | Organic Synthesis based on Integration of Chemical Reactions. New Methodologies and New Materials |
Project/Area Number |
24106722
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 康之 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30144330)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 二酸化炭素 / ニッケル触媒 / マンガン / カルボン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
安息香酸誘導体を二酸化炭素から合成する試みの歴史は古く,ハロゲン化アリールから調製される有機マグネシウム試薬(Grignard試薬)や有機リチウム試薬と二酸化炭素とを反応させると対応するカルボン酸が得られることは,有機化学の教科書にも記載されている基本的な反応である。しかし,この変換反応を有機合成化学に応用することを考えると,Grignard試薬はその反応性が高すぎるために官能基許容性に乏しいなどの問題が生じる。我々はGrignard試薬や有機リチウム試薬を調製する際の原料である有機塩化物,特に塩化ベンゼンおよび塩化ビニル誘導体の二酸化炭素を用いる直接カルボキシル化反応を行った。反応はより効率的であり,また種々の官能基が存在していても反応には影響を及ぼさなかった。ニッケル触媒と還元剤として金属マンガン粉を用いることにより,塩化アリール類のカルボキシル化反応を達成した。触媒前駆体としてニッケル2価トリフェニルホスフィン錯体,添加配位子としてトリフェニルホスフィン,還元剤としてマンガン粉末,添加剤としてヨウ化テトラエチルアンモニウム,溶媒として1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを用いた場合二酸化炭素雰囲気下において,常温,常圧という極めて温和な反応条件下においてカルボキシル化が進行した。この触媒系は様々な官能基を有する塩化アリールを基質としても進行し,エステル基やアミド基のようなGrignard試薬と反応する官能基や鈴木・宮浦反応の反応点となるボロン酸エステルのような官能基についてもそれらを損なうことなく目的の安息香酸誘導体が得られた。また,フェノールから1段階で誘導可能なトリフラートあるいはトシラートを反応点とした基質を用いた場合にもカルボキシル化は良好に進行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
二酸化炭素は遷移金属触媒などに対しては,比較的不活性であり,研究当初は高温,高圧の反応条件が必要ではないかと予想していた。しかし,還元剤としてマンガン粉末をヨウ化テトラエチルアンモニウム塩とともに用いることにより,反応は極めて容易に進行することが明らかとなった。結果的に本年度の研究により,入手が容易で安価であるが反応性に乏しい塩化ベンゼン誘導体を基質に用いることに成功し,さらに反応は室温,常圧の二酸化炭素のもとで極めてスムーズに進行することを明らかにすることが出来た。さらにフェノール誘導体,またこれまで報告例のなかった塩化ビニル誘導体も基質として用いることを見出した。よって本研究においては,当初計画した以上に,大いに進展していると考えることが出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続いて二酸化炭素を用いる反応について,酸化還元過程の制御を行うことを中心に研究を推進する予定である。基質の展開も積極的にはかりたい。触媒作用の最も重要な過程である酸化還元過程の制御をより効率的な反応集積化により達成したい。
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