2012 Fiscal Year Annual Research Report
電気的スイッチによる反応点制御を用いた拡張π電子系分子の集積的合成法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Organic Synthesis based on Integration of Chemical Reactions. New Methodologies and New Materials |
Project/Area Number |
24106730
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
光藤 耕一 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (40379714)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | カップリング反応 / ホモカップリング / 集積化 / ジイン / 蛍光ソルバトクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
ビルディングブロックを連結して分子を構築するときに、ワンポットで特定のファクターのオン/オフによって複数の反応点から任意の反応点を選ぶこと、すなわち反応点のスイッチングができれば、反応空間及び反応時間の集積化が可能となる。同一装置内でオン/オフを繰り返しながら同一の操作を行うだけで選択的かつ逐次的に結合を生成して、結合様式の異なるカップリング生成物の構築が可能となるからである。本研究の目的は、電気のオン/オフをスイッチングの要素に用いて、複数の反応点を有するビルディングブロックの反応点を制御し、スイッチのオン/オフをくり返しながら逐次的に反応を行うことで、高度に集積化された連続カップリングシステムにより新規拡張π電子系分子を構築し、その光学的・電気化学的性質を明らかとすることである。 我々はこれまでにハロアリールボロン酸をスイッチオン条件下でホモカップリングさせた後、スイッチオフにして、アリールボロン酸とのクロスカップリング反応を行うことで一気に4つ以上のπユニットが連結した分子を構築する方法を開発している。さらにはハロアリールアルキンを電気的スイッチングで反応点制御した連続的カップリング反応に供することで内部にジイン構造を有する拡張π電子系分子の合成も達成している。本年度は機能性材料としての性能が期待される含ヘテロ原子π拡張ジイン誘導体の合成を行なった。ハロチエニルアルキンやハロベンゾチエニルアルキンを起点として、電気的スイッチングにより反応点制御した連続カップリング反応を行なうことで、チオフェン骨格を有するπ拡張ジイン誘導体を合成することに成功した。さらには連続反応の二段階目でヘテロ芳香環を導入することで、多様なヘテロ芳香環を有するπ拡張ジインの合成も達成した。更にこれらのπ拡張ジインのジイン骨格をヘテロ芳香環へと変換するこで、多様なオリゴアレーンを新たに合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標であるヘテロ芳香環を導入したπ拡張ジイン誘導体の合成法の確立を達成した。さらには得られたジイン誘導体をヘテロ芳香環へと変換することでさらに多様な含ヘテロオリゴアレーンへの変換をも達成しており、当初の計画以上に研究は進行している。また今回得られた拡張π電子系分子化合物の物性も興味深い性質を示しており、合成化学的にも材料化学的にも興味深い。当初の計画以上の成果と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
電気化学的なスイッチングを利用した連続的カップリング反応により既に多様な新奇拡張π電子系分子群を創出した。今後はそれらの分子群の光学的・電気化学的性質を精査し、その構造と物性の相関を明らかとしたい。そのなかで得られた知見を新奇分子デザインへとフィードバックする。 また本研究のなかで偶然、溶かす溶媒によって蛍光波長が変化する蛍光ソルバトクロミズムを示すπ拡張ジイン誘導体を見いだした。一般的に蛍光ソルバトクロミズムは電子豊富な部位と電子不足な部位を分子内に併せ持ち、大きな双極子モーメントを有する分子で観測されることが多い。今回見いだした分子は両末端にアミノ基を有するπ拡張ジイン誘導体であり、対称で分子全体で双極子を持たない。このような化合物が蛍光ソルバトクロミズムを示すのは珍しく興味深い。密度汎関数法を用いて計算化学的に評価したところ、窒素上の非共有電子対とジイン骨格の共役が本現象の発現に重要であることが示唆された。そこで、様々な類縁体を合成・評価し、本現象を定量的に評価し、構造と光物性の相関を明らかとしたい。 また、これまで連続的カップリングで合成してきた分子は基本的には直鎖上の分子である。今後は多次元に広がった分子構造の構築をめざす。まずは二次元の広がりを有する分子創成をめざす。方法としては、まずは連続的カップリングにより屈曲部位を有する鎖状π共役を合成後酸化的手法等で縮環する方法と、カップリング反応剤に3つ以上の反応点を導入することで、3つ以上のπユニットを環状に結合させ面構造を構築する手法を考えている。本法を確立したら、三次元にπ共役面の広がった拡張π電子系分子の創成へと展開する。複数の反応点の反応性を制御した逐次型カップリング反応により、より複雑な構造の構築をめざす。 これまでにない多様な複雑骨格が同様の操作で合成可能であり、機能性材料の新規合成法として期待される。
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Research Products
(12 results)