2012 Fiscal Year Annual Research Report
機能性炭素反応剤を用いた集積型反応の高度複合化
Publicly Offered Research
Project Area | Organic Synthesis based on Integration of Chemical Reactions. New Methodologies and New Materials |
Project/Area Number |
24106731
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新藤 充 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (40226345)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 連続反応 / イノラート / 環化付加 / トリプチセン / ベンザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでイノラートを用いたC=OやC=Nに対する付加(環化)反応を見出してきた。しかしイノラートの炭素炭素多重結合に対する付加(環化)反応に関しては報告例もなく未開拓である。特に非分極型炭素炭素多重結合への付加環化はチャレンジングである。今回は高活性三重結合であるベンザインに対するイノラートの付加反応を検討した。 イノラートはジブロモエステルとtBuLiから容易に調製できることを既に見出している。この溶液と0.8当量のオルトブロモフェノールトリフラートとの混合溶液にnBuLiを加えてLi/Br交換反応に引き続く脱離反応でベンザインを系内で発生させてイノラートと反応させたところ、複雑な混合物となった。そこで種々検討したところベンザインの当量数を過剰量とすることで、主生成物としてヒドロキシトリプチセンが得られることがわかった。本反応は(1)イノラートとベンザインとの形式的[2+2]付加環化によるベンゾシクロブタノンのエノラートの生成;(2)もう1等量のベンザインとの[2+2]付加環化による[2+2]環化体の生成;(3)環開裂によるヒドロキアントラセンの生成;(4)もう1当量のベンザインとの [4+2]環化付加によるヒドロキシトリプチセンの生成、からなる4連続集積反応と考えられる。本反応は初めてのイノラートを用いた炭素炭素多重結合への環化付加であるとともに、多段階連続集積反応である点で特徴的である。トリプチセンは超分子化学や材料科学で用いられる構造単位であり、その合成はアントラセンとベンザインとの付加環化反応が一般的である。しかし原料となるアントラセンの安定性や合成法の問題もあり容易に合成可能なトリプチセンは限定的である。特にヒドロキシトリプチセンの合成例は極めて少ないことから、本法はこの分野に一つの新しい方法論を提供することになる点で価値が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
イノラートとベンザインの反応では以前の予備試験では多数の化合物が生成し、反応制御が容易でないと予想していた。しかしながら、今回思いもよらず9-ヒドロキシトリプチセンを単離することができたため、初めての環化付加反応の制御に成功したのみならず、超分子や材料科学で極めて有用な化合物を得ることができた。この予想外の結果により、トリプチセンの化学に大きく展開し発展する可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
各種ベンザインとイノラートの環化付加によるトリプチセンの合成を試みる。特に配向性の制御が可能なアルコキシやシリル基で置換されたベンザインとの反応は興味深い。さらに生成した9-ヒドロキシトリプチセン誘導体はほとんど合成例がないため、反応性、物性や機能性に関して精査することで新しい有機反応素材、有機材料素材としての可能性を開発する。たとえば、トリチル基等価性の観点から、9位のヒドロキシル基をカチオン、アニオン、もしくはラジカルに変換してその反応性を精査する。新たな水酸基の保護基となることが期待できる。また、ベンザインの配向性の制御により一方向に水酸基が張り出したトリプチセンの合成が可能となる。これは3次元的に水酸基やそれから変換できる置換基を配置することができ、金属配位子の設計や、各種イオンや分子を包接するホスト分子の設計へと展開できる。以上のような方針でトリプチセンの合成をしっかりと確立したうえで、機能性分子への展開を図る。
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Research Products
(20 results)