2012 Fiscal Year Annual Research Report
フロー型反応器によるアルキルケトンのβ位C-H結合変換法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Organic Synthesis based on Integration of Chemical Reactions. New Methodologies and New Materials |
Project/Area Number |
24106732
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
桑野 良一 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20273477)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 同一時空間反応集積化 / 空間的反応集積化 / ケトン / ニトリル / 脱水素化 / 1,4-付加 / β-エナミノン |
Outline of Annual Research Achievements |
Ni(cod)2とPMe3から系中で調製される触媒存在下、クロロベンゼンを酸化剤、K3PO4を塩基として用い、エチルケトンと2級アミンを反応させるとβ-エナミノンが良好な収率で生成する。しかし、この触媒系が効率よくエナミノンを与える基質はエチルケトンに限られており、例えばブチロフェノンを基質として、内部の炭素にアミンを反応させることはできなかった。 そこで、各種遷移金属錯体を触媒としてブチルフェニルケトンとピペリジンとの反応を試みた。その結果、Pd(OAc)2とN,N'-ジメチルプロピルアミンから調製される触媒の存在下、酸化剤として酢酸アリルを用いることによって、目的とするβ-エナミノンが良好な収率で得られた。また、酸化剤として炭酸アリルメチルを用いてこの反応を行うと、ジエナミノンが収率84%で得られた。 PdCl2(PMe3)2を触媒とし、酸化剤としてブロモベンゼン、塩基として炭酸セシウムを用いることによって、良好な収率で2-フェニルプロピオニトリルからβ-アミノアクリロニトリルが得られた。こうして得られた生成物は、単離することなく塩酸でエナミン部位を加水分解することによって、アルデヒドに変換された。また、マイクロ波の照射下、ヒドラジンと反応させることによって3-アミノピラゾールを与えた。 これら一連の反応にフロー反応系を適用し、装置や反応条件を上手く設定すれば、最後の再脱水素化の過程を抑えることが可能と予想される。しかし、この反応では炭酸塩やフッ化物塩といった有機溶媒に不溶の塩基を使用する必要があった。そこで、不溶性固体を用いないケトンの脱水素化について検討したところ、触媒としてRh(acac)(CO)2、酸化剤として炭酸アリルフェニルを用いると、塩基の添加なしでも脱水素化が高収率で進行することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らによって見出された、ニッケル触媒による飽和ケトンの脱水素化、アミンの1,4-付加、再脱水素化の同一時空間反応集積化による飽和ケトンからβ-エナミノンの生成反応の適用範囲を拡張することに成功した。特に、従来のニッケル触媒でなく、新たにパラジウム触媒を見出しそれを利用した点について、一定のブレークスルーを見出すことができたと考えられる。 また、この同一時空間反応集積化による反応のフロー反応系への適用を視野に入れて、不溶性の無機塩基を利用しないケトンの脱水素化についても検討し、酸化剤として新たに炭酸フェニルアリルを使用することによって、無機塩基を使用しなくても目的の反応が進行しうることを見出した。これにより、平成25年度に計画していたニッケル触媒による飽和ケトンのアミンとの反応のフロー反応系への応用が可能になった。 以上の点で、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に開発されたロジウム触媒による飽和ケトンの脱水素化を利用した、フロー型反応器によるケトンの脱水素化および求核剤の1,4-付加の空間的反応集積化の実現するために、さらなる反応条件の最適化を行うとともに、このロジウム触媒による脱水素化法の基質適用範囲の拡大を図る。さらに、基質となるケトン、アリル炭酸フェニル、ロジウム触媒の溶液をフロー型反応器に実際に通し、収率良くα,β-不飽和ケトンを与えるか確認する。 ケトンの脱水素化が高収率でおこるように反応器を最適化した後、α,β-不飽和ケトン生成後に求核剤となるアミン溶液が混合するように設計されたフロー型反応器を用い、目的とするβ-アミノケトンを収率良く与える反応条件を探索する。その後、基質適用範囲について検討する。以上により、ケトンの脱水素化、アミンの1,4-付加の空間的反応集積化による飽和ケトンのβ位アミノ化法を開発し、「反応器の使い分けによる生成物の作りわけ」を実現する。さらに、安定炭素アニオン、ス ルフィド、フェノキシドにようなアミン以外の求核剤を用いて反応を試み、アルキルケトンのβ位C-H結合をC-C, C-S, C-O結合に変換する新しい方法論を確立する。
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