2012 Fiscal Year Annual Research Report
光増感によるエンドソーム脱出の分子科学
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science for Nanomedicine |
Project/Area Number |
24107516
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大槻 高史 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80321735)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | エンドソーム / 光増感剤 / 蛍光色素 / 一重項酸素 / 活性酸素 / RNA / 細胞質内輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞のエンドソーム内に溜まっている物質を細胞質に移行させる方法として、光増感剤と光を用いる方法が知られている。この方法において利用可能な光増感剤を、蛋白質SH基に結合させることのできるマレイミド基をもつ色素の中から選抜した。ここでは、光増感剤を付加したRNAキャリア蛋白質による「光誘導RNA導入法」をベースに選抜を行い、赤色光(波長590-645 nm)により励起できる8種類の光増感剤候補物質を用いた。その結果、赤色域の色素の中からそれぞれ3種類ずつ有効な光増感剤を見つけることができた。また、光増感剤と光を用いて細胞質内物質輸送をするためのもう1つの例として、光応答アポトーシス誘導分子を設計した。 また、光増感剤のどのような性質がエンドソーム破壊と相関が高いかを調べるために、赤色光により励起できる光増感剤候補物質に、赤色励起光をあてたときの蛍光量子収率(Φ)、一重項酸素生成量子収率(ΦΔ)、を水溶液および疎水溶液条件のもとで測定した。およその熱生成に関係するパラメータ(1-Φ-ΦΔ)についても計算により求めた。光増感剤候補物質を付加したRNAキャリアを用い、RNAのエンドソーム内導入操作の後、光照射によるRNAの細胞質内拡散(エンドソーム脱出)の度合を調べた。 これらの結果とパラメータ測定の結果とを照らし合わせて、エンドソーム脱出の度合と最も相関の高いパラメータを探し出した。結果として、エンドソーム破壊と相関が高いのは一重項酸素生成量子収率であることが見いだされた。ただし、次年度において実験結果の再現性の確認および傍証の追加が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、RNAキャリア蛋白質の作製、光応答パラメータの測定、エンドソーム脱出との相関と高いパラメータの調査、光応答誘導分子の設計を全て行うことができた。以上のことから、おおむね順調に研究が進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
緑色光および青色光で励起可能な光増感剤候補物質について、一重項酸素生成量子収率を測定する。 その結果からエンドソーム脱出能が高いと予想される候補物質を用いて「細胞質内RNA導入実験」と「RNAi実験」を行い、期待通り励起光に応じてRNAの細胞質内導入と活性が見られるかどうかを検証する。 また、24年度に設計した「細胞内に入りエンドソーム内に蓄積しやすいアポトーシス誘導分子」に対して、光増感剤候補物質を結合させて、光応答アポトーシス誘導分子を作製する。 光を当てた際のアポトーシス効率の評価を行い、光増感剤の選択指針が正しいかどうかを検証する。
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Research Products
(7 results)