2012 Fiscal Year Annual Research Report
堆積物の岩石化に伴う力学的・水理学的物性の変化に関する実験的研究
Publicly Offered Research
Project Area | New perspective of great subduction-zone earthquakes from the super deep drilling |
Project/Area Number |
24107705
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
野田 博之 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (50619640)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 続成作用 / 岩石力学実験 / 岩石レオロジー / 水理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成24年度は主に、変形実験のサンプルとなる、再現性のある人工圧密堆積物の作成法の確立を行った。特に重要であった点は、以下の4点である。 (1)粉体を高温高圧で圧密する際、「粉の詰め方」を適切に制御できなければ、再現性のある実験は不可能であった。24年度前半、珪石粉末と水を適切な割合で混合して作成した泥状物質から粉体を沈降・堆積させることにより、内部に気泡が無く緻密な圧密初期物質を作成する手法を考案した。 (2)圧密初期物質を高温高圧で(最大 550 ℃、封圧 200 MPa、間隙水圧 100 MPa)圧密する際、炉のショートにより実験が 8 時間程度で中断するケースが続発した。本問題は研究計画時には想定外の物であり、原因究明と対処法の確率が24年度中期-後半の重要課題となった。原因としては、珪石粉末・水混合物と、周囲の封圧媒体(アルゴンガス)を隔てるジャケットとして用いた銅中の水の拡散により、炉に水蒸気が達してしまい、それが凝結する事により電熱線の短絡が発生する可能性が明らかとなった。ジャケットの材質を銀に代える事により本問題の克服に成功。長時間の高温高圧圧密実験を安定的に行えるようになった。 (3)珪石粉末を異なる温度条件下で圧密。圧密中の歪、透水係数の変化を連続的に実測した。その結果、圧密初期物質の透水係数約10の-15乗平方メートルから圧密に伴い透水係数は減少し、例えば最も高温の 550 ℃の場合20時間後には、12 %の圧縮線歪、透水係数は10の-18乗平方メートル程度まで減少した。 (4)圧密後の試料(例えば500℃で14時間)に予察的3軸変形試験を行った結果、試料そのものよりも両端に置いている多孔質アルミナスペーサが変形した。本経験は(4)と併せ、実験可能な条件において試料が十分に力学的・水理学的に「岩石化」する事を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
24年度の当初の目標は、まず圧密実験の手法を確立し、その後に、人工的に作成した堆積物・岩石を用いた3軸変形試験を行う事であった。前者に関しては、計画当初には明らかで無かった問題点(ジャケットを水が拡散する事による炉のショート)が発生したが、それを解消できた事から、十分に達成できたと評価できる。 後者に関しては、前述の問題点克服に多くの時間及び金銭的資源(特に実験の為の出張費用)を消費したため、十分に取り組む事はできなかった。しかし後半の課題は、もともと25年度中も引き続き取り組む課題であった事、予察的実験から力学的に岩石化が実際に実験条件下で起こせる事を確かめられた点を鑑みると、やや遅れ気味ではあるものの着実に進展していると評価できる。 これらの評価に基づき、24年度の達成度「(3)やや遅れている」とするのが妥当である。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、圧密度を制御して作成したサンプルの3軸変形試験を行い、力学挙動の変化に主に着目する。そのようなデータは、例えば日本列島の様な付加体形成のシミュレーションや地震発生過程の解明に不可欠な情報であり、その取得が本研究計画の最も重要な点である。金銭的資源の許す限り、実験によるデータ取得のための出張を行う予定である。実験は広島大学のガス圧式高温高圧変形透水試験機を用いて行う。 24年度の経験から、今後圧密物質の変形試験を行う上での最大の障壁は、両端に設置する多孔質アルミナスペーサの強度が低い事が考えられる。比較的固結度の低いサンプルの変形には、現状の多孔質アルミナで問題が無い事は確認済みであるが、十分に圧密・固化したサンプルに対しては試料の強度が多孔質アルミナの強度を超えてしまう事が明らかとなっている。本問題点を克服するため、固結度の高い試料の作成-変形実験の際にはスプリットアルミナを用いる事を検討している。スプリットアルミナとは、多孔質で無い焼結アルミナ板を組み合わせ、水の流路を確保しつつも高い強度を保つためのサンプルアセンブリであり、多孔質アルミナに比べて水を通しにくいため、透水係数の測定には若干不向きであるが、変形時の力学挙動測定に関する本問題を解決できる可能性が高い。 また、24年度の主要な研究結果の一つである圧密時の歪・透水係数の変化(25年5月に学会で発表予定)に関する論文をまとめる。
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Research Products
(2 results)