2012 Fiscal Year Annual Research Report
ミュオンと核プローブの相補利用による磁性積層膜の深さプロファイル探査
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier of Materials, Life and Elementary Particle Science Explored by Ultra Slow Muon Microscope |
Project/Area Number |
24108505
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
壬生 攻 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40222327)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ミュオン / メスバウアー分光 / 放射光核共鳴散乱 / 薄膜 / 積層膜 / 界面 / 磁性 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,メスバウアー分光法,放射光核共鳴散乱法,既存ミュオンビームによるミュオンスピン共鳴法を用いた実験を通じて,超低速ミュオンを用いた磁性薄膜・積層膜研究の提案を行い,超低速ミュオン新学術領域研究の活性化に貢献していこうとするものである。 公募研究初年度の平成 24 年度は,まず,種々の磁性積層膜の作製と,密封放射線源を用いたメスバウアー分光実験および放射光を用いたメスバウアー分光実験(核共鳴散乱実験)を推進し,超低速ミュオンの活用対象となる系の探索と試料構造の高品質化および最適化を進めた。なかでも,ホイスラー合金系積層膜および酸化鉄系積層膜に重点を置き,良質な積層膜の作製を進めるとともに,界面磁性や磁気的性質の深さプロファイルの測定を推進した。 伝導電子が 100% スピン分極した「ハーフメタル」の候補物質であるホイスラー合金の積層膜に関しては,メスバウアー核種のスズ 119 あるいは鉄 57 を含んだホイスラー合金に対して,界面磁性や磁気的安定性の膜厚依存性を調べた。酸化鉄系積層膜に関しては,スピントロニクスの分野で注目を浴びている強磁性ハーフメタル物質のマグネタイトと強磁性絶縁体のマグヘマイトの作り分け条件の最適化を進めるとともに,鉄/マグネタイト界面の局所構造・局所磁性解明に向けた研究を推進した。 さらに,次年度以降の計画を先取りし,放射光メスバウアー分光法を用いた非平衡電子スピン分極の検出の試みを行った。 なお,これらの成果は,国際会議招待講演 1 件を含む 10 件の学会・研究会講演および 1 報の査読つき国際学術誌論文で発表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いくつかの研究対象物質ターゲットのうち,ホイスラー合金系積層膜および酸化鉄系積層膜に対する研究がおおむね順調に進んでいる。一方,次年度以降の計画を先取りし,放射光メスバウアー分光法を用いた非平衡電子スピン分極の検出の予備実験も行った。この先取り実験は,本新学術領域研究主催の研究会における情報蒐集と意見交換を通じた触発によるところが大きく,公募研究の採択が研究の進展を後押ししていることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
2 年間の公募研究の最終年度の平成 25 年度は,引き続き種々の磁性積層膜の作製とメスバウアー分光実験および核共鳴散乱実験を推進し,超低速ミュオンの活用対象となる系の探索と試料構造の高品質化および最適化を進めていく。また,スピン注入やスピンホール効果を用いた非平衡スピン分極状態の創製と検出などの課題も検討し,ミュオンと核プローブの相補利用による磁性研究を推進していく。以上の成果をまとめ,現在本新学術領域研究で着々と立ち上げが進められている超低速ミュオンビームの有効利用に向けて,次期公募における課題の再採択を目指していく。
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Research Products
(12 results)