2012 Fiscal Year Annual Research Report
金属ナノ粒子およびクラスターの配位プロセスを利用した光電気化学機能の創出
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Programming - Science of Molecular Superstructures for Chemical Devices |
Project/Area Number |
24108708
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
立間 徹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90242247)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光電気化学 / プラズモン共鳴 / 金属ナノ粒子 / 金属クラスター / 配位結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀ナノ粒子を酸化チタンに接触させると、プラズモン共鳴によって電荷分離(プラズモン誘起電荷分離)が起こり、銀ナノ粒子が酸化・溶解する。これにより、多色フォトクロミズムや赤外フォトクロミズムが可能であり、多色表示などができるが、室内光下に放置すると、全ての粒子が酸化されるため、脱色が起こる。そこで銀にかえて金を用い、ヨウ素イオンやチオシアン酸イオンなどを共存させて金の酸化電位を負にシフトさせることで、銀の場合と同様に、多色表示が可能になった。このディップは、銀の場合と異なり、長時間の光照射下でも安定であった。銅ナノ粒子の、ポリマーによる保護法も確立した。 さらには、1つの銀ナノ粒子を用いて散乱光を多色変化させることにも成功した。酸化チタン上に球状銀ナノ粒子を置くと、粒子全体で電子振動が起こるモードと、酸化チタンとの界面に電子振動が局在化したモードとに分かれ、それぞれ緑色と赤色の波長域で共鳴および光散乱を示すことが暗視野顕微鏡観察と顕微分光測定により明らかになった。各モードを選択的に励起すると、各々の共鳴モードが選択的に抑制され、その結果、オレンジ色であった散乱光の色をそれぞれ赤色、緑色に変化させることができた。これは、電子振動が起こるサイトで優先的に光酸化溶解が起こることによる。このような単粒子の暗視野顕微鏡観察と光誘起反応の両立は、粒子を配位子で適度に保護することで可能になった。 金属クラスターについては、まず、金、銀、銅、白金、パラジウムのクラスターを容易に合成する方法を開発した。これまで、酸化チタンに金クラスターを酸化チタンに担持することで、金クラスターが増感色素と同様に働き、光電変換や光触媒などに使えることを示してきた。本研究ではさらに、銀クラスターを用いた場合にも同様の効果が得られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、今年度に予定していた、配位プログラミングを利用した金ナノ粒子の光による溶解とそれによる情報書き込み、情報の維持に成功した。また、銅ナノ粒子の保護にも成功した。さらには、当初計画していなかった、単一銀ナノ粒子のサイズと形状の光による制御も行い、ナノフォトニックデバイスにつながる成果を得た。加えて、次年度に備え、各種金属クラスターの簡便な合成法の確立も行った。このように、当初の計画を達成した上で、それを基に、さらなる成果を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に扱ったプラズモン共鳴を示す金属ナノ粒子は、サイズは2 nm以上であり、数千個以上の原子から構成される。平成25年度には、それをさらに小さくして2 nm以下のサイズにした、原子十数個~数百個程度からなる金属クラスターも扱う予定である。こうしたクラスターは、軌道が離散的になり、2 nm以上のナノ粒子とは異なる光応答性や反応を示すようになる。Au25などの金クラスターをはじめ、さまざまな金属クラスターの化学合成が可能であり、サイズごとに分離することもできる。こうしたクラスターの形成には、表面積/体積比が大きいゆえに、表面に結合して安定化する配位子の存在が重要である。我々はすでに、この金属クラスターを光励起すると、励起電子が酸化チタンの伝導帯へ移動して、電荷分離が起き、光電変換や光触媒反応を駆動できることを明らかにしている。金クラスターのサイズ(Au15-Au39)や、金属の種類(金、白金、パラジウム)、配位子の種類(グルタチオン、メルカプトコハク酸、ジメルカプトコハク酸など)を変えることで、その特性が大きく変わることも明らかにした。本研究では、銀や銅などのクラスターについても検討を行う。この系に配位プログラミングを導入することで、金属クラスターから半導体(酸化チタンなど)への電子移動に伴う酸化反応により、粒子サイズの制御を試みる。それにより、電気、磁気、光、触媒特 性の最適化や、制御などが期待できる。このとき、サイズによる軌道構成の変化を利用する。 金属ナノ粒子の形態やスペクトルの制御についても、引き続き検討を行う。
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Research Products
(22 results)