2012 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子・薬剤キャリアとして機能する自己集合型プログラマブルナノスフィアの創製
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Programming - Science of Molecular Superstructures for Chemical Devices |
Project/Area Number |
24108710
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原野 幸治 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70451515)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超分子化学 / フラーレン / 自己組織化 / ドラッグデリバリー / 遺伝子治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)多段階表面修飾によるタンパク質修飾ナノカプセルの構築と構造観察:10-100ナノメートルサイズの自己集合型カプセルは細胞への分子輸送に重要な担体である一方,共有結合もしくは非共有結合的な手法でカプセルに表面機能性を付与させること,およびその構造を同定することは一般的にカプセルの構造安定性の問題から容易ではない.我々は,直径約20 nmのフラーレン二重膜ベシクルの段階的な表面修飾によってタンパク質修飾ナノカプセルを得ることに成功した.特に,アビジン修飾ナノカプセルは導電性のインジウムスズ酸化物表面上において安定であり,高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)によるベシクル表面の微細構造観察によりアビジン単分子に由来する表面構造を画像化することができた.抗がん剤を内包した状態で化学反応により表面修飾することも可能であり,培養細胞を用いた実験で細胞内に効率的に薬剤を導入できることも明らかにした. (2)水溶性アミノフラーレンを用いた肺選択的siRNAデリバリー:肺がんを含む重要な肺疾患は多数あり,体への負担が少ない有効な治療方法が望まれている中で,肺疾患部位特異的な薬剤・遺伝子導入試薬の開発が注目を集めている.本研究では,カチオン性フラーレン誘導体TPFEを用いた「生体内における階層的分子集合」という新しい方法論を用いて,μmサイズの集合体形成を鍵とした低毒性の肺選択的siRNAデリバリーを実現した.すなわち,TPFE-siRNA会合体をマウスに静脈注射すると,TPFE-siRNAと血清タンパクとの弱い相互作用により粒子径がμmサイズまで増大し,他の臓器に比べ細い肺の毛細血管に選択的に蓄積したのち,TPFE-siRNA会合体へと再び解離し細胞内へと取りこまれることで,ダメージの小さい効果的な肺選択的輸送が達成されることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究課題申請時の計画において,初年度は水溶性ナノスフィアのライブラリ構築とその構造同定を中心に遂行し,核酸との相互作用を試験管レベルで評価する事を目標と設定した.しかしながら,既存の材料を再評価する中で,カチオン性アミノフラーレンであるTPFEが核酸とのサブマイクロメートルサイズ粒子形成という我々の目的と合致した自己集合挙動を示すことが見いだされた.そのため,TPFEを用いたsiRNA輸送の検討に注力した結果,iv vitroでのsiRNA安定化とRNAi発現の確認を経て,マウスを用いたin vivoでの臓器選択的輸送を達成するに至った.in vivoの系での検討は全体計画にも入れておらず,我々の予想を越えた進展を見せた.加えて,モノアニオン型フラーレンを用いた二重膜ベシクルについても,階層的表面修飾法と走査電子顕微鏡を用いた構造観察という新境地を開拓することができた.化学修飾ナノカーボンの応用という展開では,カーボンナノホーン上に結合した置換基を種とした有機分子の核形成テンプレートとしての機能をあきらかにし,高分解能電子顕微鏡による観察で核前駆体の分子レベル構造解析にも成功し,全く予想外ながら有機科学的手法による核形成制御という新たな研究の芽が育ちつつある.その一方で,当初目的である新規両親媒性コニカルフラーレンの合成および構造評価も順調に進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度検討における重要な知見は,比較的単純な分子設計をもつ水溶性フラーレンが極めて効率的な遺伝子キャリアとなる複合体形成挙動を見せたことである.両親媒性コニカルフラーレンのより合目的的なデザインにより,更に効率的,選択的な遺伝子・薬剤輸送能が可能と期待される.そのため,当初目的通りコニカルフラーレンのキャリアとしての機能評価を進めていく予定である.一方で,合成したコニカルフラーレンについて従来の界面活性剤の類とは大きく異なる特徴的な界面挙動が見いだされており,分散剤としての応用に新しい可能性を秘めている.ゆえに,生体応用という枠にとらわれず広く材料科学での新規マテリアルとしての展開を考慮しつつ研究を進める.
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Research Products
(18 results)