2012 Fiscal Year Annual Research Report
レドックス活性リングクラスターの分子集積に基づく超構造体界面の構築
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Programming - Science of Molecular Superstructures for Chemical Devices |
Project/Area Number |
24108730
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 正明 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90260033)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 多核錯体 / 大環状クラスター / 架橋配位子 / ルテニウム / 混合原子価 / 赤外 / 電子移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分子内に強いdπ (金属)-pπ (オキソ配位子)相互作用を持つオキソ架橋ルテニウム三核錯体をモジュールとした新規な大環状クラスターを合成した。2つのRuサイトにTHFが配位した三核錯体とピラジンとを1:1で反応させ、カラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、三核錯体がリング状に集積した四量体、五量体、さらに六量体を単離することに成功した。4,4’-ビピリジンを架橋配位子とした際、リング状五量体と六量体が単離され、1,3-ビス(4-ピリジル)プロパンを用いた際には二量体から十量体までのリング状クラスターが生成した。ピラジン架橋大環状状クラスターでは、三核錯体の1電子還元に帰属される過程が多段階波として観測されたことから、分子内でのモジュール間相互作用が示された。CV測定から、混合原子価状態の熱力学的安定性を示す均化定数は100~1000の範囲にあると見積もられた。架橋配位子が4,4’-ビピリジンの場合、混合原子価状態の安定性は小さくなった。 dabcoを架橋配位子とした場合には環状六量体のみが得られ、単結晶X線構造解析により構造決定することができた。この錯体は還元過程が2段階であり、π共役系配位子であるピラジンとは全く異なる還元過程を示すことがわかった。定電位電解IRの測定より、混合原子価ピラジン錯体のCO伸縮振動は、そのスペクトル幅が顕著にブロード化しており、大環状クラスター内の分子内電子移動がIRのタイムスケールで起きていることが示唆された。その一方、dabco錯体では混合原子価状態においても鋭いCO伸縮振動スペクトルを与えることから、IRより遅いタイムスケールでの電子交換が推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した三核錯体を基本骨格とする大環状クラスターの合成と構造解析、ならびに溶液内における酸化還元挙動の系統的調査をほぼ終了し、架橋配位子の種類(長さとπ軌道レベル)やクラスターの核数の効果などを考察することができた。また、電解UV-vis-NIRスペクトルや電解IRの測定についても、ほぼ全ての大環状クラスターについて調べることができ、分子内での電荷移動相互作用や分子内電子移動速度に与える要因を考察することに成功した。これらの成果は、研究を計画した当初、達成することを期待したものであったため、本研究はおおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究により大環状クラスターの分子構造や電子構造を実験的にはほぼ押さえることができたので、今後は本研究課題の主目標である電極基板表面への超構造体形成に本格的に取り組む必要がある。超構造体形成に向けたアプローチとしては樹木状配位子を大環状クラスターの外部に修飾することでカラムナー液晶相を構築することを計画している そのため、樹木状配位子の設計と合成を行い、さらにクラスター骨格上に錯形成導入する必要がある。今後は早急にこれらの分子設計と合成を実践する。また、昨年度まで単発的に試みてきた基板表面に吸着した大環状クラスターおよびその組織体のSTM観察や表面IR分光による表面構造の観察などを本格化する必要がある。
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Research Products
(8 results)