2012 Fiscal Year Annual Research Report
核酸の特異構造形成に基づく錯生成プログラミング
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Programming - Science of Molecular Superstructures for Chemical Devices |
Project/Area Number |
24108734
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
井原 敏博 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (40253489)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 核酸 / 希土類金属錯体 / モレキュラービーコン / DNAアプタマー / ATPセンサー / 分子認識 / スプリットプローブ / 時間分解発光測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成24年度は、希土類錯体形成型モレキュラービーコン(LCMB: lanthanide complex molecular beacon)を利用した汎用分子センサーに関する研究を行った。 DNAの両末端にそれぞれ、EDTA(Ethylenediaminetetraacetic acid)とPhen(1,10-Phenanthrorine)を修飾してLCMBを合成した。ECMBは希土類金属イオン(Ln3+)存在下、ヘアピン構造をとり、その両末端部分でEDTA-Ln3+-Phen錯体を形成する。Eu3+やTb3+などのような希土類金属イオンを用いると複合体は発光を示した。LCMBのループ部分に相補的なDNAを添加すると、二本鎖形成によりヘアピン構造が解け、Ln3+錯体が解離して発光が消える。この二本鎖形成に伴う発光のon/offは可逆的であることが確認できたので、これを利用してLCMBを核酸以外の分子をターゲットとするセンサーに拡張した。LCMBの相補鎖を核酸以外の分子との間をつなぐインターフェースとし、ここにアプタマーを利用するとこれが可能になる。本研究ではATPアプタマーをインターフェース(iATP)とし、LCMBを利用したATPセンサーを構築した。LCMBのループ部分はiATPの相補配列とする。LCMB-iATP二本鎖状態では発光がoffの状態であるが、この系にATPが添加されると特に的な発光を観察することができた。同条件下、その他のNTP、すなわち、CTP、TTP、GTPではほとんど発光しなかった。期待したとおり、ATPは競争反応によりiATPをLCMBから剥ぎ取り、LCMBが発光性のヘアピン構造を形成したものと考えら得る。 本系により、LCBMの塩基配列を変えることで、アプタマーの存在する様々な分子を、希土類錯体の発光を利用した高感度な時間分解法により検出可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、申請者らが従来より行ってきた研究の必然的発展系であるため、経験、知識等があり、比較的順調に研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は錯生成反応を利用してDNAのコンフォメーションを可逆的に変化させ、それをもって機能性核酸の活性を制御することを目的として研究を行う。具体的には、2つのターピリジン(terpy)が骨格中の互いに離れたサイトに挿入した人工DNA(terpy2DNA)を合成する。Fe2+などの適当な金属イオンが存在すると分子内のFe2+:terpy = 1:2錯体が形成をとおして、terpy2DNA分子全体がΩ型の構造をとる。Ω構造形成の結果、terpyの外側に存在していた2つのセグメントが連続した配列となる。これは、金属イオンによるDNAの塩基配列の編集(可逆的スプライシング)と看做すことができる。 terpyをDNA骨格中に組込むためにterpyを基体とするアミダイト試薬を合成する必要があるが、これはすでに合成に成功している。今年度はこの試薬の大量合成から研究を開始する。合成したterpyアミダイトをDNA自動合成装置にセットし、目的とするterpy2DNAを合成する。金属イオン、特に2価の遷移金属イオンとの相互作用を、吸収スペクトル、相補鎖との二本鎖形成をとおして観察する。アプタマーやDNAzymeの活性をterpy2DNAとの相互作用を利用してコントロールする。 また、並行して、RCA(rolling circle amplification)を利用した高感度核酸分析に関しての検討も行う。RCA反応生成物にEDTA-DNA、およびPhen-DNAの2つのプローブを作用させることで繰返し配列のすべての連結部分で発光性の希土類錯体を形成させる。特定の配列のDNAを鋳型にしたライゲーション反応でRCAテンプレートの環状DNAを合成するため、鋳型DNAを高感度に検出することができる。
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Research Products
(10 results)