2012 Fiscal Year Annual Research Report
非晶質凝縮相を形成する高分子錯体の創出とエネルギー変換・貯蔵素子への応用
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Programming - Science of Molecular Superstructures for Chemical Devices |
Project/Area Number |
24108739
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小柳津 研一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90277822)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 高分子錯体 / 光電変換 / 光電荷分離 / 電荷輸送 / 有機電池 / 複合膜 / 酸化還元電位 / チタニア電極 |
Outline of Annual Research Achievements |
高密度レドックスポリマー複合膜における電子移動の解明により、有機光電変換に不可欠な革新的ポリマー・金属錯体複合素子を創出し、金属錯体の光誘起電子・エネルギー移動を組み込んだ電荷分離・輸送系へ拡張することを目的とする。これらの支配因子と考えられる膜/電解液界面における物質移動を効率化し、光電荷分離に関わる化学素子の基礎を確立する。次いで、ポリマー/電解質界面に配置させた金属錯体による光電荷分離を利用した有機太陽電池を試作する。これら基礎的追究から得られる知見をもとに、斬新な光電荷分離・輸送材料として具体化することを目指して展開した。本年度の実績と成果を記す。 (1) p型レドックスポリマーの設計と合成 NO中心ラジカルを中心として、p型電位と電極反応の速度定数を把握し、色素錯体の電位に近くチタニアのフェルミ準位より深いエネルギー準位で可逆的1電子移動を示すレドックス席を絞り込んだ。次いでこれらをペンダント型置換基として繰返し単位当たり導入した高密度レドックスポリマーを湿式成膜可能なレベルまで分子量高く合成し、レドックス容量を実測した。電解質中での平衡膨潤度、対イオンや溶媒の物質移動量と速度を実測し、対イオン種や溶媒因子との相関を把握した。 (2) 金属錯体を複合した高密度レドックスポリマーの光電気化学確立 ポリマー膜の電荷輸送過程を直流・交流分極により解明し、外圏機構による正電荷の素早い受け渡しを描像した。透明電極上に形成させたポリマー膜にRu錯体や有機色素を担持し、チタニア極と組合わせ光照射下での開回路電圧を測定、p型ポリマーが輸送・蓄積する電荷量を把握した。 (3) 湿式太陽電池の試作と動作実証 上記の電荷分離膜を用いて太陽電池を試作した。開回路電圧、短絡電流、フィルファクター、変換効率ηを把握し、従来のヨウ素系に匹敵する高特性を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果により、有機光電変換に不可欠な革新的ポリマー・金属錯体複合素子が創出されるとともに、膜/電解液界面における物質移動をポリマー表面への規則的・階層的構造の導入を手段として効率化する切り口から、ポリマー/電解質界面に配置させた金属錯体の増感反応に基づく界面での光電荷分離を光電変換場に利用した有機太陽電池の動作が実証された。さらに、光電荷分離・輸送性を高めた高密度レドックス凝縮相としての設計により変換効率を向上させる手掛かりが得られ、当初に期待した以上の成果が集積された。本年度の研究展開により、自己電子交換による電荷輸送に適したレドックス席間距離を有する高密度ポリマー骨格が選定され、分子式に基づく理論容量50 mAh/g以上のポリノルボルネンやポリエーテル等についてレドックス席を濃度高く合成する条件が明確になり、今後の展開の基礎が確立された。電気化学的に可逆応答を示す新しいポリマーの創出は、電解液中で膨潤かつ不溶な有機層を形成させるためポリマーに臨界架橋度以上の架橋構造を導入する手法で有用であることとが一般性高い知見として導かれ、その具体的方法論として、電極上に湿式法で膜厚制御しながら成膜した後に架橋体へと効果的に変換するため光架橋や熱架橋に適した官能基を導入した一連のポリマーの新合成に成功している。これらの手法を用いて、メソスコピックレベルの規則・階層的構造をポリマー/電解液界面に形成させ、電極面積当たりのレドックス容量と充放電のレート特性を両立させるなど、次年度計画を前倒しした効率的展開も可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に確立された手法を駆使して、以下の項目について研究推進し、配位プログラミングによる化学素子創製の思想に合致した成果を集積する。 (1) n型レドックス席への拡張:ガルビノキシル、ニトロニルニトロキシド、ベルダジル、電子求引性基 (トリフルオロメチル基、ニトロ基、シアノ基など) を有するニトロキシド、カルボニル基に直結したアシルニトロキシドなどのn型レドックス席の基本的性質を把握し、これらをペンダント置換基として導入した高密度レドックスポリマーを分子量高く合成し、初年度の方法論により電極修飾膜でのn型容量を引き出す。 (2) n型電荷輸送の確立:励起色素から受け渡された電子を高エネルギー準位を保ったまま輸送し、逆電子移動による電荷再結合を抑制できる光電荷分離界面を構築する。初年度に得られたn型ポリマー膜に色素として働く金属錯体と電荷補償系を共存させ、光起電力の発生を確かめる。n型レドックス席の光還元をSOMOレベルおよび色素LUMOの最適化により増幅し、酸化チタンフリーの非Graetzel型太陽電池を実現する。同時に、n型酸化還元電位とレドックス容量のマッピングを完成させる。n型輸送層の平衡膨潤度、対イオンや溶媒の物質移動量と速度についても実測し、レドックス膜の特性を全容解明する。 (3) n型ポリマーを用いた光電変換系の確立:透明電極上に形成させたn型ポリマー膜に、金属錯体(色素)を擬不均一系での高密度担持や、それをペンダント基とする高分子錯体の積層により複合する。n型電荷輸送層とp型電荷補償系を共存させたセルを構成し、従来の酸化チタン系を上回る特性(酸化チタン系では不可能な開放電圧など)を引出す。 以上を総合し、「全有機色素増感太陽電池」の光電変換特性、照度依存性、耐久試験の結果をもとに、ポリマー設計に随時フィードバックさせる方策で成果集積を計る。
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Research Products
(9 results)