2012 Fiscal Year Annual Research Report
力学系および組織形成シミュレーションに不可欠なLPSO相単相の単結晶弾性率の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Science of synchronized LPSO structure -Innovative Development of Next-Generation Lightweight Structural Materials- |
Project/Area Number |
24109505
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
多根 正和 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (80379099)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 弾性率 / マグネシウム / LPSO |
Outline of Annual Research Achievements |
Mg-Zn-Y合金の18R構造のLPSO相の弾性特性の解明を対象として、研究を実施した。合金組成としては、LPSO相ほぼ単相の組成が得られるMg85Zn6Y9 (at%) を選定した。また、多結晶材の弾性率測定から単結晶の弾性率を算出するためには、多結晶材と単結晶の弾性対称性が一致する必要がある。そのため、弾性率測定に使用する試料として、ブリッジマン法にて作製された一方向凝固材を用いた。一方向凝固材に対して、光学顕微鏡による組織観察、X線回折解析による相同定、X線極点図による集合組織の解析を行った。また、超音波共鳴法による弾性率の測定を行った。光学顕微鏡による組織観察の結果、一方向凝固材はLPSO相ほぼ単相であることが明らかとなった。また、X線極点図により、板状形状を有するLPSO相結晶粒において、六方晶で指数付けした際の結晶の11-20が凝固方向に平行に配向したような集合組織が形成されていることが明らかとなった。このことから、一方向凝固材は巨視的には六方晶の弾性対称性(独立な弾性スティフネスc11, c33, c13, c44, c66)を有することが明らかとなった。共鳴法を用いた弾性率の測定により、一方向凝固材の凝固方向に平行な方向のヤング率は、純Mgの等方体多結晶のヤング率よりも高いことが明らかとなった。一方向凝固材の弾性スティフネスから本研究において考案したVoigt-Reuss-Hill近似を用いて、バリアントの存在を考慮した六方晶系の単結晶の弾性スティフネスを算出した。単結晶の弾性スティフネスからc軸に平行および垂直な方位のヤング率を算出した結果、c軸に平行な方向のヤング率は垂直な方向のヤング率よりも高く、18R構造における弾性率の異方性が本研究により初めて明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた集合組織材の弾性率から単結晶の弾性率を算出する方法であるinverse Voigt-Reuss-Hill近似法を構築することができた。これにより18R構造のLPSO相単相・単結晶の弾性率を本研究により初めて明らかにすることができた。したがって、当初の計画は順調に達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に研究を実施したMg95Zn6Y9 at%合金では、18R構造が安定なため、熱処理により完全に14H構造に変態させることが不可能である。そのため、今年度は、LPSO相の結晶構造が弾性率に及ぼす影響を明らかにするため、熱処理により18Rから14Hに変態させることが可能なMg98Zn5Y7 at%合金の一方向凝固材を弾性率測定用の試料として用いる。18R構造のMg98Zn5Y7 at%合金の一方向凝固材に対して、X線回折解析による相同定、X線極点図を用いた集合組織の解析、光学顕微鏡観察を用いた微細組織の観察、EPMAを用いた組成分析、共鳴超音波スペクトロスコピーを用いた低温~高温域での弾性率測定を行う。次に、一方向凝固材の弾性率から、昨年度考案したInverse Voigt-Reuss-Hill近似を用いて、18R構造の単結晶の弾性率を算出する。また、一方向凝固材に対して真空中での熱処理を施すことにより18R構造から14H構造に相変態させる。変態後の14H構造を有する一方向凝固材に対して、低温~高温域での弾性率測定を行う。これにより、結晶構造(相の安定性)と弾性率との相関関係を明らかにする。また、LPSO相の体積分率が25%程度であるMg97Zn1Y2 押出材(75%程度のα-Mgとの2相材料)およびLPSO相の体積分率が85%程度であるMg89Zn4Y7 押出材に対しても、熱処理の有無によりLPSO相を18Rおよび14H構造とした試料を作製し、作製した試料に対して弾性率測定を実施する。また、α-Mg単相材料の弾性率の測定も実施する。これにより、2相状態での弾性率からLPSO相の周辺に残存するα-Mg相の弾性率を差し引くことによって、LPSO相単相の弾性率を求め、合金組成とLPSO相の弾性率との相関関係を明らかにする。
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