2012 Fiscal Year Annual Research Report
岩石透水実験から推察する沈み込み帯での流体循環
Publicly Offered Research
Project Area | Geofluids: Nature and dynamics of fluids in subduction zones |
Project/Area Number |
24109703
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
片山 郁夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10448235)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 流体循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
沈み込み帯でみられる火山や地震活動は地球内部での流体循環と密接に関わっており,スロー地震も例外ではない。その震源域は高ポアソン比で特徴づけられること,また有効垂直応力が低いことなどから,スロー地震の発生域には流体の存在が示唆されている。沈み込み帯での流体循環は,これまで含水鉱物の安定関係により議論されてきたが,本研究では岩石中の粒界やクラックを移動する浸透流が沈み込み帯での水循環に影響を及ぼすとの新しいモデルを検証した。 沈み込むプレートからマントルへ放出された水は浮力のため直上に移動すると考えられているが,蛇紋岩のように片理が発達した岩石では浸透率に異方性が生じ,流体移動が面構造に制約される可能性がある。室内実験により蛇紋岩の浸透率を測定したところ,片理に平行な方向で浸透率が2桁ほど高く,流体が面構造に平行な方向に流れやすいことが分かった(Kawano et al. 2011)。蛇紋岩化がみられるプレート境界では,沈み込みによる剪断変形のためプレート境界に平行な面構造が発達していることが期待される。その場合,脱水反応によりマントルへ放出された流体は蛇紋岩の面構造に沿いプレート境界方向に選択的に移動することが予想される。プレート境界での流体速度を蛇紋岩の浸透率をもとに計算すると,プレート境界方向では7 cm/yearとなる。西南日本では流体速度がフィリピン海プレートの沈み込み速度(4 cm/year)より速いため,マントルウェッジ内を流体は上方に移動すると期待される。一方,東北日本では太平洋プレートの沈み込み速度(10 cm/year)が流体速度より速いため,マントルウェッジへ吐き出された水は上方へ移動するのではなく,コナーフローによりさらに深部へ運び込まれる。このような沈み込み帯での流体循環の違いが,日本列島における火山や地震の地域性の一端を担っているのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画どおり研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
岩石中の粒界に流体が存在すると地震波速度が著しく減少する。また、地震波速度は流体の形態や形状に依存するとも報告されている。蛇紋岩はマントルへの水の浸透により起きるが,そのような蛇紋岩化の最前線では自由な流体が岩石中を移動していると考えられる。また,完全に蛇紋岩化した岩石では水に飽和し,さらに水が供給されても流体は蛇紋岩中を通過すると考えられる。そのように自由な水と共存する蛇紋岩の地震波速度を室内実験により検証する。 蛇紋岩はかんらん岩に比べ著しく遅い地震波速度や高いポアソン比で特徴づけられるが,蛇紋岩中に流体が存在する場合はさらなる速度低下やポアソン比の上昇が期待される。関東下などのプレート境界で報告されているポアソン比(~0.31)は蛇紋岩の存在(アンチゴライトのポアソン比は0.29)だけでは説明がつかず,蛇紋岩と流体が共存している可能性を示唆する。本年度は蛇紋岩の透水実験中に弾性波速度を測定することにより,水と共存する蛇紋岩の地震波特性を調べ,プレート境界での流体の分布や存在形態を議論したい。
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Research Products
(12 results)