2012 Fiscal Year Annual Research Report
沈み込むプレートにおける含水・脱水プロセス~海底電磁気観測からのアプローチ~
Publicly Offered Research
Project Area | Geofluids: Nature and dynamics of fluids in subduction zones |
Project/Area Number |
24109707
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
市原 寛 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 技術研究副主任 (90553074)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 地殻流体 / 沈み込み帯 / OBEM / magnetotellurics |
Outline of Annual Research Achievements |
電磁気観測から明らかとなる比抵抗構造は、地下の流体分布に感度の高い数少ない観測量の一つである。このため、沈み込み帯の模式地である東北日本弧では、比抵抗イメージングが近年精力的に行われており、陸域および2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)震源域において比抵抗構造が解明されている。今年度は日本海溝海側2点および陸側斜面の観測空白域1点の計3点において海底電磁気観測装置(以下OBEM)を設置する事によって、沈み込む前から巨大地震発生域にいたる電磁気観測の測線を完成させた。OBEMの投入は5月に海洋研究開発機構が所有する船舶(淡青丸)を用いて実施し、回収は三ヶ月後の8月に同じく淡青丸を用いて行った。なお、OBEMは海洋研究開発研究機構が所有する自由落下・自己浮上式小型OBEMである。得られた時系列データは高品質であり、これを用いて周期100~20000秒までの精度の良いMT impedanceが推定された。本観測および既存のMT impedanceを基に二次元インバージョン解析を行った結果、以下の特徴をもつ比抵抗構造が得られた。1)沈み込み前の海洋地殻は20 ohm-m以下の低比抵抗を示す。2)沈み後も水平距離で最低40kmは低比抵抗であるが、その後抵抗は高くなり、2011年東北沖地震の破壊開始点域においては500 ohm-m以上の高比抵抗を示す。3)陸側斜面の先端部は低比抵抗である。また、平成25年度に実施予定の日本海(島部)における電磁気調査のためのサイトサーベイも実施し、観測点候補地を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は東北日本弧の太平洋側、特にプレートへの吸水が起きていると考えられる海溝海側における比抵抗構造を解明することであった。天候不順のため、海溝海側に十分な観測点が設置できなかったものの、その代わりに陸側斜面の観測空白域にOBEMを設置することによって、震源域における比抵抗構造の決定精度を向上することができた。また、本来の目標である、海溝海側においても、低比抵抗域の大きさを制約する事に成功したため、計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は東北日本弧の背弧域における比抵抗構造を明らかにするため、計画通り日本海の海底および島部において電磁気観測装置を設置・回収する。この観測により、平成24年度および計画研究等による観測点と合わせ、沈み込み前から背弧拡大域に至る観測網が世界に先立って完成する。得られたデータより二次元または三次元インバージョン手法を用いて背弧部の比抵抗構造を解明する。解明された比抵抗構造モデルを岩石実験結果(比抵抗と含水率の関係性)および地震波速度構造等と比較し、含水率や浸透率の解明を行う。この結果を基に、沈み込みに伴う含水プロセスの議論を行う。
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