2012 Fiscal Year Annual Research Report
PSTによる神経細胞因子NCAMのポリシアル化機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Deciphering sugar chain-based signals regulating integrative neuronal functions |
Project/Area Number |
24110520
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
長江 雅倫 独立行政法人理化学研究所, 糖鎖構造生物学研究チーム, 基幹研究所研究員 (60619873)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / 糖鎖生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリシアル酸は、シアル酸がα2-8結合を介して重合した高分子であり、初期発生時に動物の脳内に豊富に存在する細胞外マトリックスである。ポリシアル酸は神経細胞接着因子NCAMなどのごく限られた蛋白質上のN結合型糖鎖に存在する。ポリシアル酸の生理機能についてはシアル酸の強い負電荷によって生じる静電反発が神経細胞間の非特異的な接触を防ぐ役割を果たしていると考えられている。ポリシアル酸の合成をつかさどる酵素がポリシアル酸合成酵素PSTである。PSTはNCAMへの最初のシアル酸付加(開始反応)から、その後の伸長反応まで単独で行うことができる。これは開始反応ではNCAMを認識し、伸長反応では末端のシアル酸を認識することを意味する。本申請課題はPSTの酵素反応のメカニズムを原子レベルで明らかにすることを目的としている。 目的の達成のためには高純度のPSTを大量に調製することが必要不可欠である。一般に糖転移酵素は細胞内腔で働く蛋白質のため活性を保持した蛋白質の生産が難しいとされている。申請者は大腸菌、昆虫細胞、動物細胞の発現系をそれぞれ構築した。その結果、大腸菌の発現系では目的蛋白質が得られなかった。また昆虫細胞の発現系では酵素活性を保持した蛋白質の産生には成功したが、溶解度が低く構造解析に適した蛋白質は得られなかった。そこで動物細胞を用いた発現系の構築に取り組み、膜結合型蛋白質の生産に成功した。次年度は構造解析に向けた系の最適化などに取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本申請課題はポリシアル酸を合成する酵素であるPSTについて、その酵素反応のメカニズムを原子レベルで明らかにすることを目的としている。糖転移酵素は内腔で働く蛋白質であるため、一般に大量発現系を用いた蛋白質生産が難しい。本申請課題が目指すX線結晶構造解析では、高純度に精製された蛋白質がミリグラム量以上必要である。このため初年度は蛋白質生産に向けた取り組みに注力した。生産コストを考え、大腸菌、昆虫細胞などの廉価な手段の検討に大部分の時間を割いたものの、目的蛋白質の大量生産はできなかった。そこで動物細胞を用いた大量発現系を構築に取り組み、膜結合型蛋白質の生産に成功した。こうした蛋白質生産の試行錯誤によって当初の研究計画からは若干の遅れがでている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度に構築した動物細胞の発現系を利用して蛋白質生産を推し進める予定である。PSTはN末端に膜貫通領域があり、C末端に触媒ドメインを持つ。本申請課題の目的はC末端側の触媒ドメインについて原子レベルの知見を得ることである。このためN末端にシグナル配列を付加してた触媒ドメインをベクターに組み込み、分泌蛋白質として生産する。PSTは糖蛋白質であるが、糖蛋白質の結晶化には糖鎖構造が均一であることが不可欠である。このため本研究では糖転移酵素のGnTIが欠失した細胞株HEK293 GnTI-/-細胞を使用する。大量の蛋白質を生産したのちには、精製系の構築する必要がある。本研究では、ヒスチジンタグをC末端に付加したコンストラクトを使用するため、アフィニティー精製を予定している。また高純度の蛋白質が得られたのちには、結晶化実験に順次取り組む予定である。
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Research Products
(2 results)