2012 Fiscal Year Annual Research Report
神経ーミクログリア接触シグナルによる脳内環境制御メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Brain Environment |
Project/Area Number |
24111508
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大西 浩史 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (70334125)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞間相互作用 / 膜型分子 / ミクログリア / 脳内免疫 / チロシンリン酸化 / 樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はこれまで、貪食細胞と神経細胞に強く発現する膜型受容体SIRPファミリーの機能について解析を進め、マクロファージでは貪食を正負に制御すること、神経細胞ではうつ様行動を制御することなどを明らかとしてきた。これらの成果に基づき、本研究では脳内免疫系におけるSIRPファミリーの機能解析に取り組んでいる。本年度は、SIRPα 遺伝子破壊(KO)マウスの脳で、樹状細胞(DC)マーカーであるCD11cや、マクロファージ系細胞の活性化の指標となる補体やLysozymeのmRNAの発現が顕著に増加することを見出し、さらに組織化学的解析やフローサイトメトリーを用いた解析により、野生型マウスの脳内ではわずかにしか認められないCD11c陽性のミクログリア様細胞が、SIRPα KOマウスの脳内では著しく増加することを明らかにした。さらにSIRPαの細胞外リガンドであるCD47のKOマウスでも同様の表現型が得られることを確認し、これらKOマウスの表現型が、CD47とSIRPαを介した細胞間相互作用シグナルの欠損に原因することを示した。さらに詳細な解析を進め、KOマウス脳内におけるCD11c陽性細胞の増加は、脳内の特定の領域に限局して認められることも明らかとした。現在、このCD11c陽性ミクログリアの詳細な性質や由来について、さらに解析を進めている。本研究を進めることで、SIRPαによる脳内免疫系の恒常性制御機構の解明をすすめ、さらに、その異常による脳内恒常性の破綻・神経障害への関与を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロアレイ解析により、SIRPα KOマウスの脳で、DCマーカーであるCD11cや、マクロファージ系細胞の活性化の指標となる補体(C4)やLysozymeのmRNAの発現が増加する可能性を見いだしていたが、本年度は、定量的PCRによりこれら分子の発現量の変化を定量的に確認するとともに、組織化学的解析により、CD11cを発現する細胞がKOマウスの脳内で増加しており、また、これらの細胞がミクログリアのマーカー分子を発現していることを明らかにすることができた。このようにKOマウスの表現型について、新たな知見が得られたため、これを手がかりとする解析に計画を修正した。そのため、当初計画していた、SIRPファミリーを指標としたミクログリアの分類と同定、in vitroでのミクログリア機能解析、SIRPβについての解析は計画通り展開できなかったが、一方で、新たに見いだしたCD11c陽性ミクログリア様細胞についての解析を進めることで、新しいミクログリアサブタイプの分類を進めることができると期待している。実際、この細胞群には、Dectin-1、CD14など自然免疫系に関わる分子が特徴的に発現していることなど、すでに新たな知見を見いだしつつあり、研究計画の修正は発展的なものであると考えている。また、当初計画していたコンディショナルKOマウスを用いた解析については、神経特異的SIRPαKOマウスに加えて、CD11c-Cre, LysM-Creを導入して樹状細胞やミクログリア特異的なKOマウスの作製も軌道に乗せることが出来ており、すでにこれらマウスの解析にも取り組んでいる。以上より、全体として計画はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、前年度に見いだしたCD11c陽性のミクログリア様細胞(マイクログリアのサブタイプと考えられる)についての解析を重点化することを計画している。計画としては、現在見いだしているDectin-1やCD14など、自然免疫系の膜表面マーカーを手がかりにさらに詳細な解析を行い、CD11c陽性細胞の性質と機能を解析する。また、SIRPα KOマウス脳内で、CD11c陽性ミクログリア様細胞が増加している脳内領域は、野生型マウスにおいて、幼若な時期にミクログリアの増加が認められる領域と一致することから、SIRPαの欠損により、時間的制御を逸脱して未熟なミクログリアが増加した可能性が考えられる。そこで、野生型マウスの生後に増加する未熟なミクログリアとの間で細胞表面マーカーなどの比較を行い、SIRPαシグナルがミクログリアの成熟過程に関わる可能性を探る。また、骨髄キメラマウスを作製してCD11c陽性ミクログリア様細胞の由来(末梢or中枢)を明らかにする。一方で、CD11c陽性細胞自身のSIRPα欠損が、SIRPα KOマウスの表現型の原因であるかどうかを、CD11c-Cre, LysM-Creマウスを使ったコンディショナルKOマウスを用いて解析する。神経特異的なコンディショナルKOマウスについても解析を行い、どの細胞に発現するSIRPαが、KOマウスの表現型に関与するのかを検討する。また、当初の計画に従い、CD11c陽性ミクログリア様細胞の増加が脳内免疫系の機能に及ぼす影響について、脳梗塞などの神経障害モデル動物を用いて解析を行う。これらの解析により、SIRPシグナルによる脳内恒常性の制御メカニズムを明らかにする。
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Remarks |
http://biosignal.dept.med.gunma-u.ac.jp/
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Research Products
(13 results)