2012 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞内のカルシウム調節破綻を介した神経変性過程の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Brain Environment |
Project/Area Number |
24111524
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 彩栄 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80321610)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / カルシウム / グリア細胞 / アミロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病(AD)脳内におけるアミロイドの脳内への沈着は認知症発症のずっと以前から始まっている。 他方、活性化アストロサイトやミクログリアの増生は発症後に進行し、アストロサイト内におけるカルシウム濃 度が上昇している事が示されている。 申請者らはADの病態として、神経細胞のみに注目が集まっている現状の中で、グリア細胞を含めた脳内環境の重要性に着目し、アストロサイト内におけるカルシウム調節の破綻が、アミロイド病理と神経変性、シナプス脱落の間を仲介する変化であると考えた。よって、本研究では、アルツハイマー病に深く関わるとされるアミロイドがアストロサイトに及ぼす変化と、神経細胞に対する影響を検証しようと考えた。 申請者らは、平成24年度に目標としていた以下の点について、興味深い結果を出すことができ た。まず、アミロイド処置によるアストロサイト内のカルシニューリンーNFATシグナルの活性化し、アミロイドによる細胞内カルシウムレベルの上昇が証明された(カルシウムインジケーターを用いてアストロサイト内のカルシウム濃度を半定量した)。また、アミロイド負荷によるカルシニューリンの切断、活性化を証明することができた(ウエスタンブロット法)。さらに、アミロイド負荷によるNFAT核移行の亢進が認めると同時に、アミロイド負荷による、アストロサイトからの炎症性サイトカイン放出の亢進を認めた。 以上の実験について、カルシニューリン阻害剤であるFK506を用いて、アミロイド負荷による影響がカルシニューリン-NFAT系の活性化を介した変化であることを検証中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記のように、研究の仮説にもとづいて結果が出ており、当初の研究計画よりも先に、重要と思われるサイトカインの同定の部分まで進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題 では特にアストロサイト内のカルシウムーカルシニューリンーNFATに着目し、1アミロイドが、アストロサイト 内のカルシウム調節機構に与える影響、アストロサイト内のカルシウム調節機構の異常が、シナプス脱落や神経 変性を起こすメカニズムについて検証する。 これにより、グリア細胞内のカルシウムシグナルがシナプス機能に与える影響に関する基礎的な知見が得られる と期待できる。 昨年度の結果を踏まえて、本年度は、AD脳の病理学的、生化学的解析により、AD脳のアストロサイトの中でカルシニューリン/NFATシグナルの活性化が起こっているかどうかを検証する。さらに、NFATの下流に位置するターゲットとして、炎症性サイトカインの上昇、グルタミン酸取り込みなどの変化の有無について検討する。その上で初代培養神経細胞と共培養を行い、アストロサイト内でのカルシニューリン活性化が、シナプス結合、神経変性などに与える影響を検討する。 これについては、現在、サイトカインアッセイにより新たなターゲット分子をいくつか見出しているので、そのターゲット分子に着目して研究を展開する。
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Research Products
(13 results)