2012 Fiscal Year Annual Research Report
内因性チャネルを用いた脳内レドックス環境イメージングと老化・病態脳研究への応用
Publicly Offered Research
Project Area | Brain Environment |
Project/Area Number |
24111528
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柿澤 昌 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40291059)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 酸化シグナル / ニューロン / 小脳 / プルキンエ細胞 / カルシウム / リアノジン受容体 / 一酸化窒素 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
機能分子への酸化修飾の蓄積は、老化や疾患発症の主要因の一つであると考えられている。したがって脳内環境に関する研究を進めるうえで、酸化環境に着目することは有意義であると考えられるが、十分な定量性と空間分解能を有する測定法はこれまで確立されていなかった。申請者は近年、リアノジン受容体(RyR)のカフェインに対する応答性(CICR)は酸化シグナルによる影響を受けないが、一酸化窒素(NO)に対する応答性(NICR)は酸化シグナルにより阻害されることを見出し、NICR/CICR比の測定による酸化状態モニター法を思いついた。このような背景を基に、本研究は、NICR/CICR比の測定による細胞内酸化状態モニター系を確立したうえで脳神経細胞内酸化環境をモニターし、老化・神経変性疾患との関連性解明を目指すとともに、薬物投与による脳内酸化環境の操作が老化・神経変性疾患に及ぼす影響を明らかにすることを目的として計画された。 平成24年度には、小脳プルキンエ細胞をモデル系として、NICR/CICR比測定による神経細胞内酸化環境モニター法確立を目的として研究を進め、以下に記すような結果を得た。 1. 若齢マウス個体由来の小脳スライス標本を、様々な濃度の過酸化水素で前処理し、カルシウムイメージング法によりプルキンエ細胞のNICR、CICRを測定し、NICR/CICR比を求めたところ、濃度依存的な低下が見られた。 2. NICR/CICR比の低下に伴い、実際に小脳RyRの酸化修飾、すなわちジスルフィド結合の形成が上昇することを、ビオチンスウィッチアッセイと言う生化学的手法を用いて確認した。 3. 実際に個体の加齢に伴いNICR/CICR比の低下および小脳における酸化修飾の蓄積がみられることを、生後20ヶ月齢の老齢個体由来の小脳スライス標本を用いて確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、NICR/CICR比の測定による細胞内酸化状態モニター系を確立したうえで脳神経細胞内酸化環境をモニターし、老化・神経変性疾患との関連性解明を目指すとともに、薬物投与による脳内酸化環境の操作が老化・神経変性疾患に及ぼす影響を明らかにすることを目的として計画されたものである。 計画初年度である平成24年度には、小脳プルキンエ細胞をモデル系として、NICR/CICR比測定による神経細胞内酸化環境モニター法確立することが当初の目的であった。 そして、研究実績の概要にも記したように、1) 若齢マウス個体由来の小脳スライス標本を、様々な濃度の過酸化水素で前処理し、カルシウムイメージング法によりプルキンエ細胞のNICR、CICRを測定し、NICR/CICR比を求めたところ、濃度依存的な低下が見られた、2) NICR/CICR比の低下に伴い、実際に小脳RyRの酸化修飾、すなわちジスルフィド結合の形成が上昇することを、ビオチンスウィッチアッセイと言う生化学的手法を用いて確認した、3) 実際に個体の加齢に伴いNICR/CICR比の低下および小脳における酸化修飾の蓄積がみられることを、生後20ヶ月齢の老齢個体由来の小脳スライス標本を用いて確認した、という結果が得られた。これらの結果が得られたことは、今年度における当初の計画目標がほぼ達成されたことを意味する。 一方、次年度以降に予定されている、中脳黒質ニューロンなどの神経変性疾患に関与する神経細胞に、NICR/CICR比の測定におる細胞内酸化環境のモニター法を適用するまでには至らなかった。したがって、予想を上回る成果が得られたとは表現しかねる。 そこで、(2)おおむね順調に進展しているを自己点検による評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、これらの成果を受けて、神経変性疾患と脳内酸化環境との関係をさらに明らかにするために、以下に記す研究を計画している。 1. 中脳ドーパミン細胞のレドックス環境モニター 細胞内レドックス環境と神経変性疾患との関連性を示す一環として、パーキンソン病(PD)への関与が示されている中脳ドーパミン細胞でもCa2+イメージングによるレドックス環境モニターが可能であることを示す。異なる濃度の酸化試薬(過酸化水素、クロラミンT等)で前処理された中脳スライス標本上のドーパミン細胞にホールセルパッチクランプ法によりCa2+蛍光指示薬(緑色蛍光)を導入し、NO応答(NICR)及びカフェイン応答(CICR)を測定し、酸化試薬の濃度依存的なNICR/CICR比の低下を確認する。さらに、生化学的手法によるタンパク質の酸化状態の検出を並行して行い、酸化試薬の濃度依存的なNICR/CICR比の低下がタンパク質分子の酸化と対応することを確認する。 2. 神経変性疾患による細胞内酸化の進行 様々な神経変性疾患と酸化ストレスとの関係が示唆されている。特にミトコンドリア複合体Iの活性阻害薬(MPTP、ロテノン)がヒトやマウスでPD症状を誘導することから、PD発症/進行時における細胞内酸化が推測される。そこで、MPTP或いはロテノン投与マウスの中脳ドーパミン細胞のNICR/CICR比を測定し、PD発症/進行と脳内レドックス環境変化との関連性を明らかにする。本項目以降では、脳内レドックス環境変化の空間的伝搬を明らかにするため、中脳スライス標本においては、単一細胞のイメージングに加えCa2+蛍光指示薬のAM体を用いたbolus loading法を導入し多細胞イメージングを行う。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Nitric oxide-induced calcium release via ryanodine receptors regulates neuronal function2012
Author(s)
Kakizawa S, Yamazawa T, Chen Y, Ito A, Murayama T, Oyamada H, Kurebayashi N, Sato O, Watanabe M, Mori N, Oguchi K, Sakurai T, Takeshima H, Saito N, Iino M
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Journal Title
EMBO J
Volume: 31
Pages: 417-428
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] TRIM50 regulates vesicular trafficking for acid secretion in gastric parietal cells2012
Author(s)
Nishi M, Aoyama F, Kisa F, Zhu H, Sun M, Lin P, Ohta H, Van B, Yamamoto S, Kakizawa S, Sakai H, Ma J, Sawaguchi A, Takeshima H
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Journal Title
J Biol Chem
Volume: 287
Pages: 33523-33532
Peer Reviewed
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