2012 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア機能と破綻による神経疾患
Publicly Offered Research
Project Area | Brain Environment |
Project/Area Number |
24111545
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
柳 茂 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (60252003)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / ユビキチンリガーゼ / Mitofusin2 / 小胞体 / カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちはMITOLの基質としてミトコンドリア外膜の融合因子であるMitofusin2(Mfn2)を同定した。Mfn2は小胞体膜上にも局在し、ミトコンドリア外膜上のMfn2と手をつなぐことにより、両オルガネラを繋ぎ留めている。ミトコンドリアと小胞体の接着点はmitochondria-associated ER membrane: MAMと呼ばれ、脂質の生合成や小胞体-ミトコンドリア間のカルシウム伝達などに重要な役割をしていることが知られている。私たちは、MITOLがMAMにも局在していることがわかったので、Mfn2との関係について解析を行った。意外なことに、MITOLによるMfn2のユビキチン化は、Mfn2の分解ではなく、そのGTPase活性を上昇させて、Mfn2を核とする複合体の形成に必須であった。この結果と符合するように、MITOLの発現を安定的に抑制したHeLa細胞(sh MITOL)において、小胞体-ミトコンドリアの接着領域が有意に減少した。また、ヒスタミン刺激後のミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度の変化を観察したところ、sh MITOLではコントロール細胞に比べてカルシウムイオン濃度の上昇が著しく抑制された。ミトコンドリアのカルシウム取り込みに対する感受性は鈍いので(閾値が高い)、効率よく取り込むためには、カルシウム吹き出し口に近接する必要がある。したがって、sh MITOLではMfn2の複合体形成ができないためにMAMの形成不全が起こり、ミトコンドリアが小胞体から効率よくカルシウムを取り込めなかったと考えられる。私たちは、小胞体-ミトコンドリア間相互作用のON/OFF機構について、MITOLによるMfn2の活性化を介した新たなモデルを提唱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の研究成果を論文にまとめて投稿したところ、レビューワーからMITOL欠損マウスからの繊維芽細胞を用いて解析を行うことにより信用性のより高い研究成果として受け入れることができる、とのコメントを頂いた。そのコメントに奮起し、精力的に研究を推進したところ、MITOL欠損マウス繊維芽細胞の樹立と解析に成功し、予想通りの結果を得ることが出来た。上記研究成果はHigh-impact Journalの1つである米国科学雑誌Molecular Cellにアクセプトされた(2013年5月にオンライン版にて公表)。この細胞株の樹立やMITOL欠損マウスの解析が当初の計画以上に進展したので、今後のさらなる研究成果が期待出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、MITOL欠損マウス繊維芽細胞を用いてミトコンドリア機能低下の有無について詳細な解析を行う。とくにミトコンドリアからの活性酸素種(ROS)の産生増大が顕著に観察されているの、詳細に分子機構を解析する予定である。さらに、ミトコンドリアの融合・分裂、移動などのミトコンドリアダイナミクスの異常についてイメージング法により解析し、その分子機構を解明する。同時に臓器特異的なMITOL欠損マウスの解析を行い、生体内におけるMITOLの生理的意義を明らかにする。とくに脳、心臓、皮膚組織特異的MITOL欠損マウスを解析し、アルツハイマーなどの神経変性疾患との関連、心不全などの循環器疾患との関連、さらには老化との関連性について詳細に解析を行う予定である。
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Research Products
(6 results)