2012 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙背景輻射を通じて高次曲率修正重力の可能性を探る手法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | The Physical Origin of the Universe viewed through the Cosmic Background Radiation - from Cosmological Inflation to Dark Ages - |
Project/Area Number |
24111701
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
仙洞田 雄一 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (80606111)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2014-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / 理論天文学 / 素粒子論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成24年度は当初の計画に沿い、Weyl曲率テンソルの形の補正がLagrange函数に含まれる重力理論での宇宙論的摂動の生成と進化を解析する手法の構築に取り組んだ。 まず、もっとも基本的な型であるWeylテンソル2次の補正項を取り上げ、その場合の重力摂動の発展方程式を導出し、de Sitterインフレーション背景でテンソル摂動の量子論的真空期待値を計算した。このとき、補正項が純粋なWeylテンソルの縮約の場合と、Lorentz共変性を自発的に破るスカラー場と結合した場合の二通りを検討した。 前者では計量の他に新たなテンソル自由度が生じるが、通常の手続きに従って個々の量子化を行なうことに支障はなく、一般相対論と同様にスケール不変な初期スペクトルが得られることが分かった。ただし一般相対論との差異は振幅の大きさとして現われ、Weyl項の相対的影響が増すにつれて振幅が減衰することが分かった。一方、後者ではLorentz共変性の破れのために新たな動的自由度の発生が抑制される利点があるものの、量子論的な真空の選定基準の変更を余儀なくされることが分かり、Weyl項の補正の大きさに応じて真空期待値が増減する可能性があることが分かった。 次に、純Weyl2次項の場合に集中し、インフレーション後の減速膨張宇宙でHubble半径内に再進入したテンソル摂動の時間発展の計算を行なった。現在までの部分的な成果として、Weyl項のエネルギースケールがインフレーションのそれに比べて低い場合、再進入後に振幅が増幅する可能性があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画全体の目標は一般的な高次Weyl曲率重力理論における宇宙論的摂動論を構築した上で理論の観測的検証を行なうことであり、当初計画では先に定式化を完了し、その後で検証を行なうこととしていた。現状ではWeylテンソル2次項を持つ重力理論における摂動論の定式化に目処が立ち、またその場合に集中して観測的検証をある程度まで進めている。部分的な順序の入れ替えが生じてはいるが、全体的な目標に対してはおおむね順調に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、一般的な高次Weyl曲率重力の宇宙論的摂動を通じた観測的検証を目として研究を推進する。これまで得られた知見から、スカラー・ベクトル・テンソル型摂動のうちテンソルへの影響がもっとも顕著であることが示唆されるため、観測量としてもテンソルと関連付けられるものを優先的に検討するようにしたい。 現在までに、Weylテンソル2次の補正項の場合におけるインフレーション起源のテンソル摂動の初期スペクトル計算が可能となったため、観測可能量である背景重力波の現在値を計算する。また、CMB偏光の計算を試みる。さらに、スカラーおよびベクトル型摂動についても初期値と現在値の計算法を確立し、それらが誘起する観測可能量を見出す。それらを現在の観測データと比較し、理論の妥当性を検討する。Weylテンソル2次の補正項の場合の方法論を確立し、より高次の一般的な曲率補正を持つ理論への拡張を試みる。
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