2012 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙マイクロ波背景放射偏光観測のための広帯域回転波長板変調器の開発
Publicly Offered Research
Project Area | The Physical Origin of the Universe viewed through the Cosmic Background Radiation - from Cosmological Inflation to Dark Ages - |
Project/Area Number |
24111715
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
松村 知岳 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特任助教 (70625003)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ミリ波 / 宇宙マイクロ波背景放射 / 偏光 / 半波長板 / 超伝導軸受け / 広帯域半波長板 / 極低温 / 反射防止膜 |
Research Abstract |
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測で確立されたビッグバン宇宙論では説明できない様々な観測事実を一挙に説明するため、宇宙初期で起きたとされるインフレーション理論が提唱されている。世界的にこのインフレーション由来の偏光シグナル(B-mode)の発見を目指すために統計誤差、及び系統誤差を抑えたCMB実験のデザインが急務とされている。シグナル・ノイズ比が低い実験はシグナルに変調をかける事が一般的で、望遠鏡の光学経路に回転波長板を用い、偏光シグナルを変調し、ロックイン方法で偏光状態を再構築する事が可能である。また、CMB実験で一番大きな系統誤差の原因である検出器同士の差分をとる際のゲインの補正が完全に不要となる。本研究は広帯域半波長変調器を制作し、性能評価を目的とした計画である。 H25年は常温での半波長板変調器を用いた試験の有用性がわかり、常温で動作する半波長板のための軸受けを作成し、現在チリにて観測中のCMB偏光観測実験POLARBEARに搭載してその評価を行った。これまで、半波長板のない観測装置で低周波帯域にて1/fノイズの影響があり、大きな角度相関の測定は困難であった。今回開発した半波長板用軸受けを含むシステムを搭載し取得したデータを解析することで、1/fの影響を観測帯域外にできることを示した。これにより、大気のある地上観測でPOLARBEARのような~3mの主鏡を持つ光学システムに半波長板変調器を搭載した場合でも、インフレーション起源のシグナルのある大角度相関の観測が可能である道を開いた。 また、将来のCMB偏光観測では前景放射の影響を加味する必要がり、広帯域での測定が必須となる。半波長板を多層にすることで広帯域を実現できるが、一方で偏光角度に不定性を持たせてしまう系統誤差が加わってしまう。本研究にて、この問題を解決する案を提唱し、実験的に実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では宇宙マイクロ波背景放射偏光観測のための広帯域回転波長板変調器の開発を目的とし、プロトタイプでの実験室での実証を計画していた。研究を進めるなか常温での半波長板変調器を用いた試験の有用性がわかり、常温で動作する半波長板のための軸受けを作成し、現在チリにて観測中のCMB偏光観測実験POLARBEARに搭載してその評価を行うことができた。これまで、半波長板のない観測装置で低周波帯域にて1/fノイズの影響があり、大きな角度相関の測定は困難であった。今回開発した半波長板を搭載し取得したデータを解析することで、1/fの影響を観測帯域外にできることを示し、インフレーション起源のシグナルのある大角度相関の観測へ道を開いた。これは、当初想定していた以上の成果であり、本研究が実際の観測ストラテジーに対して方向性を示すことができた。本研究結果を踏まえて現在地上実験POLARBEARは恒久的な常温半波長板の設置を準備している。 また、広帯域半波長板の偏光角度に対する系統誤差は既に指摘されていたが、本研究からその系統誤差を打ち消す方法が提唱され、実験及びシミュレーションにより実証を行い、結果を論文として投稿した(現在はレフリーによる査読中)。このアイディアは研究提案時にはなかったものであり、本研究により新しい世界的に注目される解を示すことができたことは、想定以上の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
半波長板の軸受けシステムとして、昨年度にスタートした極低温でも連続回転を実現できる超伝導軸受けを用いた回転子と固定子、及び駆動部の開発を引き続き行う。 昨年度は、上記のプロトタイプ(軸受け部分、駆動部分の)での動作検証を行った。これまでの結果を踏まえCMB実験にて実際に用いるに耐えうる、軸受けの動作検証また熱的特性、さらに多層半波長板の偏光特性の評価をシステム全体で評価する予定である。
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[Journal Article] Mission Design of LiteBIRD2014
Author(s)
T. Matsumura, Y. Akiba, J. Borrill, Y. Chinone, M. Dobbs, H. Fuke, A. Ghribi, M. Hasegawa, K. Hattori, M. Hattori, and 69 additional authors
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Journal Title
Journal of Low Temperature Physics
Volume: 175
Pages: n.a.
DOI
Peer Reviewed
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