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2012 Fiscal Year Annual Research Report

上皮管腔形成における変異細胞と正常細胞の競合ー超初期発がんメカニズムの解明ー

Publicly Offered Research

Project AreaRegulation of polarity signaling during morphogenesis, remodeling, and breakdown of epithelial tubular structure
Project/Area Number 24112501
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

加藤 洋人  北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (60446549)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2014-03-31
Keywordsがん / 細胞競合
Outline of Annual Research Achievements

以下3点の実績が得られ、順調な進捗である。(1)Vil-CreER(腸上皮細胞特異的にCreが発現);LSL-RasV12-eGFP, Vil-CreER;LSL-eGFP, Lgr5-CreER(腸幹細胞特異的にCreが発現);LSL-RasV12-eGFP, Lgr5-CreER;LSL-eGFPの4種の遺伝子組換えマウスを繁殖可能な体制を整えた。(2)マウス小腸のオルガノイド培養を用い、各マウスの培養小腸において、タモキシフェン誘導性にモザイク状のRas変異細胞を発生させる手技を確立した。これにより「正常上皮細胞シートにごく少数の腫瘍性変異細胞を発生させる」という状況を、マウス小腸において忠実に再現することが可能となった。(3)Vil-CreER;LSL-RasV12-eGFPマウスの小腸組織培養において、モザイク状少数のRas変異細胞(eGFP陽性)を発生させた後、変異細胞の挙動を共焦点顕微鏡を用いて観察した。がん発生初期を模倣したこの系において、変異細胞が、小腸上皮の管腔側へ押し出されながら排除されていくのが観察された。このことは、周囲の正常上皮組織によって変異細胞が排除されるという「細胞競合現象」が、マウス生体組織でも実際に起きていることを証明する大きな成果である。この現象はVil-CreER;LSL-eGFPマウスでは観察されず、Ras変異細胞特異的な現象であった。興味深いことに、Lgr5-Cre;LSL-RasV12-eGFPマウスを用いて小腸幹細胞特異的なモザイク状Ras変異細胞を発生させた場合には、変異細胞の管腔側への排除は観察されず、Ras変異幹細胞から一見正常な小腸上皮が分化・増殖し、組織構造的に正常な小腸クリプトが形成された。幹細胞に変異が起こった場合と、分化細胞に変異が起こった場合とでは、その変異細胞の運命が異なっている可能性が示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

おおむね当初の予定通りの進捗状況であり、順調に研究を進めている。本研究のテーマは、がん発生初期における正常上皮細胞と変異細胞との相互作用に関する解析であり、換言すれば「正常上皮組織に1個の腫瘍性変異細胞が発生した場合にどのような現象が起こるか」を解析することである。「研究実績の概要」に記述した通り、交付申請書に記載していた「研究の目的」「研究実施計画」に沿った研究が遂行できており、一定以上の成果を得ている。具体的には、交付申請書に記載した通りの遺伝子組み換えマウスを作製し、小腸クリプトを用いたオルガノイド培養のプロトコールを確立させ、変異細胞誘導を目的とした至適薬剤投与量の最適化を完了させた。さらに、これまでの段階においてすでに非常に有意義なデータを得ている。すなわち、マウス小腸組織にモザイク状少数のRas変異細胞を発生させた場合、それらの変異細胞が小腸上皮の管腔側へ押し出されるように積極的に排除されていく様子が観察された。このことは、生体内におけるがん発生初期において、正常上皮層に孤発性に発生した超初期がん細胞が、周囲の正常上皮組織との細胞競合に負けて物理的に体外へと排除される、ということが強く示唆される結果である。つまり、超初期発がん過程に対する生理的防御反応の存在を証明する非常に大きな研究成果である。したがって、現在までの段階については交付申請書に記載していた研究計画の通りに順調に進められており、さらに平成25年度の研究計画へと繋がる有意義な研究成果を得ていることから、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。

Strategy for Future Research Activity

平成24年度までに、遺伝子組換えマウスの作製、マウス小腸のオルガノイド培養系の確立、薬剤投与量の最適化が完了しており、実際に、小腸オルガノイド培養系における有意義な結果を得ている。平成25年度では、これらの順調な進捗を踏まえ、以下3点の研究を計画している。(1)マウス生体内の腸組織において、Ras変異細胞を少数モザイク状に発生させられるようなタモキシフェン投与の方法・投与量を確立させる。これまでに、マウス腸管培養系においては「正常上皮細胞組織による変異細胞の除去(細胞競合)」という現象の存在が証明されたが、平成25年度は、実際のマウス生体内での変異細胞の挙動・運命を観察することを目標とする。予備実験では、生体内の腸上皮組織においてもモザイク状の変異細胞を発生させることが可能であることが示唆されたため、今後、薬剤投与の方法・量を変えてモザイク効率の増減を検討し、手技を最適化する。(2)変異細胞排除の分子メカニズムを探索する。具体的には、小腸オルガノイド培養に対して様々なシグナル経路阻害剤を添加することにより、変異細胞除去を促進あるいは阻害するシグナル経路を同定する。有力な手がかりが得られたならば、それらのシグナル伝達経路に関わる分子をshRNA等により阻害させ、変異細胞除去メカニズムにおいて重要な分子の絞り込みを行う。(3)この実験系を、新規抗がん剤開発のための低分子化合物スクリーニングツールとして応用できるような基盤を整える。「正常上皮組織の作用による腫瘍性変異細胞除去のメカニズム」を標的とした新規抗がん剤を開発することを長期的目標に設定し、平成25年度内にその基盤を創る。具体的には、96ウェルプレートなどを用いた小規模かつ大スケールな小腸オルガノイド培養のプロトコールを確立させ、実際に、いくつかの低分子化合物を添加しながら、変異細胞の挙動を観察できるような系を整える。

  • Research Products

    (1 results)

All 2012

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)

  • [Journal Article] Epithelial homeostasis: elimination by live cell extrusion.2012

    • Author(s)
      Hiroto Katoh, Yasuyuki Fujita
    • Journal Title

      Current Biology

      Volume: 2012 Jun 5;22(11) Pages: R453-455

    • DOI

      10.1016/j.cub.2012.04.036.

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2018-02-02  

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