2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規Wntシグナル修飾因子LGR4による乳腺上皮細胞運命の決定と極性制御機構解明
Publicly Offered Research
Project Area | Regulation of polarity signaling during morphogenesis, remodeling, and breakdown of epithelial tubular structure |
Project/Area Number |
24112502
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西森 克彦 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10164609)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | LGR4 / Wnt / beta-catenin / mammary gland / 乳腺 / 間腔組織 / Rspondins |
Outline of Annual Research Achievements |
乳腺組織でのLGR4発現パターンを調べ、基底上皮細胞と管腔上皮細胞の乳腺管構造2層性構造のうち、LGR4が基底上皮細胞で発現している事を見出した。致死性を回避し、乳腺発達を観察する為にKeratin5-Cre Tgマウスとfx型LGR4遺伝子欠損マウスを交配し、上皮特異的なLGR4遺伝子欠損Lgr4・K5-KOマウスを作製し、上皮組織特異的Lgr4遺伝子機能の除去時の病態から乳腺組織の発生・分化におけるLGR4の機能を演繹した。 Lgr4・K5-KOマウスは第二次成長期の4週齢以降、wt乳腺の場合と異なり、脂肪組織への乳腺の陥入は損なわれ、管構造の伸長遅延および分岐形成の低下を示した。妊娠時、乳腺胞の発達不全を呈し、授乳能も失われた。これらはLgr4が生後の乳腺発達に機能を有することを示唆する。最近、乳腺基底細胞前駆細胞と乳腺管腔上皮細胞前駆細胞がそれぞれ成獣の乳腺に於いて維持されていることが報告され、我々はこの両前駆細胞の比率をFACS(Fluorescence Activated Cell Sorter)で解析した。その結果、野生型とは異なり、管腔細胞の前駆細胞数だけが、加齢と共に徐々に減じていくことを見出し、LGR4と、此より発生する細胞内シグナルが乳腺組織の発達と維持に必須の役割を持っていることが示唆された。 LGR4欠損での間腔組織異常として、新たに子宮内膜上皮の異常を見いだした。Lgr4・K5-KOマウス子宮内膜は脱落膜化が殆ど起きず、着床も起きず不妊症状となる。解剖学的解析は子宮分泌腺の発達が極めて悪い事を示した。管腔構造の子宮分泌腺は受精卵の着床時、脱落膜化の初発ステップに成長因子のLIF分泌やその他子宮内膜と生殖機能に必要な因子の合成分泌など重要な働きを果たす。本マウスでは分泌腺が発達せず脱落膜化異常を来たし、着床も起こらず、不妊症状を示すと推定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LGRs(leucine-rich repeat containing G-protein coupled receptors)はGPCR型受容体ファミリーと極めて類似した構造を持つ膜受容体である。我々は、LGR4はGPCRではなく、R-spondinと結合することで3量体G蛋白を介さず、Wnt β-cateninシグナルを制御することを見出した。 乳腺は哺乳類に特徴的なミルク分泌器官で樹枝状の管腔構造を持つ上皮性の間腔組織である。マウスにおいては胎児期に発生した乳腺原基から、第二次性徴期のホルモン刺激に依って樹枝状の管腔組織が枝分かれと伸長を繰り返し発達する。 平成24年度の研究において、我々はマウス乳腺組織におけるLGR4の発現部位を特定し、加えてLgr4欠損マウスの乳腺上皮細胞の細胞分画の割合に異常が見られることを明らかにした。FACSを用いた乳腺細胞の分画解析では、Lgr4・K5-KOマウス由来の細胞画分の比率に変化を見出した。この事はLGR4が乳腺細胞の分化に関わるが、異常の見られた細胞画分がLgr4発現細胞のものとは異なる画分であり、Lgr4が細胞非自立的なメカニズムによって乳腺上皮細胞の維持に関わっていることを示唆している。また、Lgr4・K5-KOマウスは第二次成長期にあたる4週齢ー8週齢で乳腺管構造の伸長遅延と枝状構造形成の低下を示した。妊娠時においても乳腺胞の発達不全を呈し、授乳能が失われる。これらはLgr4が生後の乳腺発達に関わる機能を有することを示している。 Lgr4・K5-KOマウスで、申請した研究課題とは異なる間腔組織の子宮での異常を見いだした。Lgr4・K5-KOマウスの子宮内膜では脱落膜化が殆ど起こらず、結果として着床が起きず不妊症状が現れるが、その原因は子宮上皮の分泌腺異常であると推定された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究を含む、今後の研究方針として、Lgr4遺伝子欠損により、欠損マウスの乳腺上皮細胞の細胞分画結果、Lgr4非発現細胞分画の割合に異常がみられた事に注目し、このメカニズムを詳細に解明することで、乳腺幹細胞から間腔組織である乳腺組織に至る分化の道筋で、LGR4とRspondinsが果たす役割について、更に解析を進める。その為、以下の研究を進める。 ①<乳腺上皮細胞のうち、Lgr4発現細胞と非発現細胞での遺伝子発現パターン解析>:Lgr4-EGFP KIマウスを用いてEGFPをマーカーとし、LGR4発現細胞とLGR4否発現細胞をFACSによって分離し、それぞれの細胞画分における遺伝子発現パターンをマイクロアレイによって解析、Lgr4の下流遺伝子の探索を行う。特に細胞の非自立的な分化メカニズムを明らかとするために、分泌性成長因子等の遺伝子に着目し解析を進める。 ②<Lgr4K5KOマウスで異常の見られる乳腺上皮細胞の解析>:乳腺細胞のFACS分画のうち、Lgr4K5KOマウスで細胞数等に異常の見られる乳腺上皮細胞画分を分離し、野生型マウスから調製した同種細胞画分と比較しながらその遺伝子発現パターンをマイクロアレイによって解析する。 ③<Lgr4とLgr5の類似・独自機能の解析>:Lgr4との二重欠損での両受容体の相対的機能解析を行う為、蘭国H.Clevers博士よりfx型Lgr5KOマウスを導入する。また、管腔形成制御を代表とするLgr4、及びLgr5の機能の相互代替機能、それぞれの独自な役割については、発現場所や時期が異なること以外にはその詳細は一切不明であり、この疑問に答えるため、Lgr4の代わりに時期組織特異的にLgr5を発現する変異マウス作成のために準備に入る。
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Research Products
(25 results)