2012 Fiscal Year Annual Research Report
管形成過程における紡錘体配向の変換機構
Publicly Offered Research
Project Area | Regulation of polarity signaling during morphogenesis, remodeling, and breakdown of epithelial tubular structure |
Project/Area Number |
24112510
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松本 邦弘 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70116375)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝学 / 遺伝子 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮管腔組織は、様々な形態の器官を構成している。これらの器官は、極性を持った上皮細胞が協調した配向性を持つことで構築される。これまでの研究から、細胞の配向性決定には紡錘体配向制御を介した細胞分裂面の配向が重要であることが知られている。イヌ腎臓尿細管上皮細胞MDCKは、3次元培養すると嚢胞を形成し、成長因子HGFを添加すると管形成を誘導する。これら一連の過程は、生体の管腔組織形成の初期段階と非常に良く相関している。そこで、MDCK細胞を用いて紡錘体配向制御機構の解明を進めた。 我々は、ROCOファミリーキナーゼLRRK1が、PLK1と共にM期の紡錘体配向制御に機能していることを見出していた。これまで、(1)LRRK1をノックダウンした細胞や、PLK1の活性を阻害した細胞では、紡錘体の配向が異常になること、(2)PLK1はPolo-boxドメインを介してLRRK1と結合し、LRRK1のC末をリン酸化すること、がわかっていた。今年度の解析から、PLK1によるLRRK1のリン酸化が、LRRK1の中心体での活性化に重要であることを明らかにした。M期にPLK1によってリン酸化されたLRRK1は、CDK1によってactivation loopに存在する1400番目のスレオニンをリン酸化され活性化する。その結果、中心体から伸びる星状体微小管の形成を制御し、紡錘体配向をコントロールしていることが明らかとなった。また、LRRK1をノックダウンしたMDCK細胞を3次元培養すると嚢胞形成が異常になることから、LRRK1による紡錘体配向制御が上皮管腔組織形成に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LRRK1による紡錘体配向制御のメカニズムに関しては、(1)PLK1によるLRRK1のリン酸化がキナーゼ活性化に重要であること、(2)LRRK1キナーゼの活性化因子としてCDK1を同定したことなど、ほぼ予定どおりに進んでいる。特に、PLK1やCDK1によるLRRK1のリン酸化部位を同定できたこと、この部位に変異を導入することで、紡錘体配向制御にこれらリン酸化が重要であることを明らかに出来たのは、大きな進展であると考えている。また、活性化したLRRK1が中心体に局在することを、作製したリン酸化抗体で明らかにできた点も、今後LRRK1の標的分子の探索や作用機構を検討する上で重要である。一方、MDCK細胞を用いた嚢胞から管形成へと至る際に、LRRK1による紡錘体の配向制御がどのように機能しているのかについては、未だ十分に解析が進んでいない。現在のところ、ノックダウン実験からLRRK1が実際に嚢胞形成に重要であることは明らかに出来ており、今後管形成時の役割について検討していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の点に焦点を絞り解析を進めていく予定である。 LRRK1による紡錘体配向制御のメカニズムに関しては、LRRK1キナーゼの標的分子の同定及び、リン酸化による制御機構の解明が重要と考えている。特に、PLK1、CDK1の下流でLRRK1が活性化することで、どのように星状体微小管の形成を制御しているのか明らかにしていく。そこで、LRRK1の基質として、(1)LC-MS/MS解析から同定されたLRRK1相互作用分子の中に基質候補が存在するか、(2)中心体に局在し星状体形成に重要な分子の中に基質候補が存在するか、検討する。可能性の高い分子について、恒常的活性型LRRK1を用いたin vitro kinase assayによって検討後、基質候補が同定できれば質量分析によるリン酸化部位の同定を進める。 また、MDCK細胞を用いた解析では、誘導型LRRK1 shRNA vectorを安定的に発現する細胞株の樹立を進め、嚢胞形成時にはLRRK1を正常に機能させ、嚢胞から管を形成させるステップで特異的にLRRK1をノックダウンする系を立ち上げる。この系を用いて、LRRK1-PLK1-CDK1の経路がどのように紡錘体配向を制御し、上皮管腔組織形成の初期段階に機能しているのか解析していく。
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Research Products
(2 results)