2012 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子のせめぎ合いから遺伝システムへ:制限修飾系を手がかりとする探究
Publicly Offered Research
Project Area | Correlative gene system: establishing next-generation genetics |
Project/Area Number |
24113506
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 一三 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (30126057)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 制限修飾系 / 集団遺伝学 / メタゲノミクス / ゲノム進化 / ピロリ菌 / DNAメチル化 / エピジェネティクス / 制限酵素 |
Research Abstract |
「ゲノムのせめぎ合いに対処するために遺伝システムが進化した」という仮説の下に、[A]制限修飾系が関わるせめぎ合いについて、「分子レベル」で明らかにする。[B]せめぎ合いのもたらすDNA切断(死)・組換え修復(再生)・ゲノム再編(進化)の「集団レベル」での解析から、遺伝システムの成立根拠に迫る。この目的のため、次の成果を達成した。 ピロリ菌のIII型制限修飾系のDNA配列認識ドメインが、非相同な遺伝子へ組換えで移り、細菌界を広く動き回る事を発見した。ドメイン単位の大規模な水平伝達は、遺伝子進化の新発見である。これらから「制限修飾系によるDNAメチル化の配列特異性が、メチロームを変換し、それが複数の遺伝子の発現を足並みを揃えて変換し、適応進化をもたらす」という「エピゲノム駆動進化」仮説を提唱した。実際に、ピロリ菌のI型制限修飾系が、遺伝子発現に影響することを証明した。第三世代シーケンサーの一分子リアルタイムシーケンシングによってピロリ菌のメチロームを解読した。ピロリ菌複数全ゲノム配列を比較して、相同組換えの痕跡を全遺伝子について数え上げた。沖縄のピロリ菌複数の全ゲノムを解読した。これを含む世界のピロリ菌の全ゲノム配列間の相同組換えによる遺伝情報の流れを、コンピューター内染色体ペインティングという新しい方法で網羅的に明らかにし、詳細な集団構造を明らかにした。相同組換えと適応進化の関係を検討した。我が国のピロリ菌多数の全ゲノムを解読し、解析を開始した。 rRNAとmRNAの翻訳開始に関わるSD相互作用が、一部の細菌では無くなっている事を発見した。 ゲノムの「自己」「非自己」認識に関わるRecBCD酵素について、立体構造にもとづく変異体解析から、反応機構モデルを提出した。 「制限修飾系の動くエピゲノム因子としての活動」および「制限修飾系の発現制御」について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新しいアプローチから、画期的な成果が続いた。ひとつは、制限修飾系の配列認識ドメインの詳細な比較による、タンパク質のドメイン単位での遠縁への遺伝子水平伝達である。もうひとつは、相互の相同組換えによる遺伝子伝達の痕跡を網羅的に検出し、微細な種内集団構造を明らかにした成果である。この二つのアプローチを統合して、生物の進化がゲノム配列の変化ではなく、DNAメチル化の変化に駆動されるというモデルを提案する事ができた。 次世代シーケンサー(イルミナ)で多数のピロリ菌ゲノムを得た。新しく出現した第三世代シーケンサー(PacBio社)に取り組み、同種内5株の全メチローム解読に成功し、一塩基分解能での膨大なデータを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
先端的オーミクス解析と、分子遺伝学的集団遺伝学的解析を統合する。(1)多数ゲノムを解読する。それらを含めた多数株ゲノム配列の比較から、ゲノム進化を集団レベルで明らかにする。(2)第三世代シーケンサー(PacBio)によるメチローム解析を進め、メチロームのミクロな進化を明らかにする。(3)複数の配列特異的DNAメチル化の、トランスクリプトームへの影響を明らかにする。(4)これらを統合し、「エピゲノム駆動適応進化」のモデルを検証する。 ピロリ菌と大腸菌を主な材料とするが、他の生物も含めて制限修飾系の新しい生物機能を解析、探索する。
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[Journal Article] Genome-wide survey of mutual homologous recombination in a highly sexual bacterial species.2012
Author(s)
K Yahara, M Kawai, Y Furuta, N Takahashi, N Handa, T Tsuru, K Oshima, M Yoshida, T Azuma, M Hattori, I Uchiyama, I Kobayashi
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Journal Title
Genome Biol. Evol.
Volume: 4(5)
Pages: 628-640
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Genome-wide survey of homologous recombination and diversifying selection in an extremely sexual bacterial species(poster presentation)
Author(s)
○K Yahara, M Kawai, Y Furuta, N Takahashi, N Handa, T Tsuru, K Oshima, M Yoshida, T Azuma, M Hattori, I Uchiyama, I Kobayashi
Organizer
Annual Meeting of the Society for Molecular Biology and Evolution 2012
Place of Presentation
Dublin, Ireland
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