2012 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子対遺伝子説の新展開:ペア抵抗性遺伝子による植物免疫の誘導機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Correlative gene system: establishing next-generation genetics |
Project/Area Number |
24113515
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河野 洋治 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (00406175)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イネ / 耐病性 / 抵抗性遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
抵抗性タンパク質Pitによる免疫スイッチOsRac1の活性化機構の解明 植物の抵抗性遺伝子産物(以下、抵抗性タンパク質)は、病原体を認識する細胞内レセプターとして働くことが知られている。現在、抵抗性タンパク質の活性化機構やシグナル伝達機構に関しては、ほとんど明らかになっていない。我々はこれまでに、いもち病菌に対する抵抗性タンパク質であるPitが植物免疫のスイッチタンパク質である低分子量Gタンパク質OsRac1を活性化し、いもち病菌に対する抵抗性に関与することを明らかにしている。しかしながら、どのような分子メカニズムで、PitがOsRac1を活性化するのかは不明であった。本研究で、Pitの相互作用タンパク質として、OsRac1を活性化しうるGDP/GTP exchange factor(GEF)ドメインを有するOsSPIKE1を同定した。酵母ツーハイブリッドを用いた解析から、OsSPIKE1とOsRac1が結合することが明らかになった。さらに、OsSPIKE1 RNAiイネでは、Pitによって誘導される抵抗性が抑制されていることを見出した。以上の結果から、PitはOsSPIKE1を介してOsRac1を活性化し、抵抗性を誘導している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で、Pitの相互作用タンパク質として、OsRac1を活性化しうるGDP/GTP exchange factor(GEF)ドメインを有するOsSPIKE1を同定した。PitはOsSPIKE1を介してOsRac1を活性化し、抵抗性を誘導している可能性を見出した。この結果は、抵抗性タンパク質Pitによる免疫スイッチOsRac1の活性化機構の解明繋がる。また、OsRac1の上流に位置する免疫レセプターである抵抗性タンパク質PitとPia (RGA4とRGA5)、さらに、Piaのいもち病菌由来のリガンドであるPex22の形質転換体を用いた免疫沈降を行い、質量分析器によりこれらの相互作用分子の同定を試みた。その結果、抵抗性タンパク質のシグナル伝達に関わると考えられる新規タンパク質の同定している。 以上のように、研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ペア抵抗性遺伝子RGA4-RGA5と単独の遺伝子で働くPitによる病原体の非病原性遺伝子の認識機構からOsRac1活性化に至るシグナル伝達機構をタンパク質レベルで明らかにする。得られた知見から、植物-病原体間の遺伝子相互作用をタンパク質レベルで体系的に理解する。特に、遺伝子数の違いによる植物免疫の誘導機構の違いに着目して解析を行う。多くの場合、抵抗性遺伝子座には、複数のNB-LRR型抵抗性遺伝子様の遺伝子がクラスターをなすという特徴的な痕跡が見られる。実際に、RGA4とRGA5もNB-LRR型遺伝子クラスターの中に隣接して存在する抵抗性遺伝子である。上記で得られたタンパク質レベルでの分子メカニズムをもとに、進化の過程で何故このような遺伝子クラスターが形成されたのか、その意義の解明も試みる。
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Research Products
(8 results)